第8話 叶わぬ想い・後編
黒は白をも包み込み…
光は闇をも包み込む……
本当の真実なんてどこにも存在しない…
ゆっさゆっさゆっさゆっさ・・・
?何?この感覚は・・・?
誰かに抱きかかえられてる!?それも抱えたまま走ってるみたい。
・・ン・・・・ォ〜ン!!
何かの音も聞こえる・・・何の音?
ヒュンヒュウゥ〜ン!
ドォ〜ン!!!ちょっと待って。「ドォ〜ン」?これってもしかして・・・・
・・・なんだかあたしは死んでないみたい。それは良かったんだけど、今はそれどこの状況じゃないみたい。
『くそっ!』
何?この声・・・?もしかして、もしかして今あたしを抱えてるのは・・・!?
バチ!思い切って目を開けてみた。するとそこにはおもいがけない人物が!?
「メガル!!」
『おっ、やっとお目覚めかお姫サマ。けど・・・悪ィが今はかまってる余裕は無い!!』
「どうして?何で?あたしはあの時確か・・・」
『あーその辺も含めて後で説明する!!とりあえず物陰に行くまでしゃべんな!!』
「・・・・」
そこまで言われるともうどうしようもないので、とりあえず物陰に隠れるまで黙ることにした。
?今になってあたしは気を失う前に痛かった首筋、左肩、脇腹、膝のそれぞれの箇所に何かが巻き付けてあることに気が付いた。とりあえず今の状況では膝が見られるので、見てみると何と!
真っ黒な布が巻き付けてあるではないか!!
これってもしかして・・・!
そして急いでメガルの顔を見た。
当の本人は汗だくになりながら今も走り続けている。しかし、ふと気が付くと、その顔にこめかみから一筋の血が流れているではないか!!
「メガル!!もういいよ!!人質をそこまでして守らなくったっていいよ!!あたしを置いて一人で逃げてよ!!」
『バカヤロウ!!しゃべんなっつったろうが!!それに・・・』
「それに?」
『それに、人質だからこそ、今ここで死んでもらっちゃぁ困るんだよ!!!』
「・・・・・!」
ようやく前方に城の影とツルの影が重なったちょうどいい物陰が見つかった。
『ふうぅ・・・この辺でいいだろう・・・』
それだけ言うとメガルはまずあたしを置いてからくずおれるようにして自分もそこへ倒れた。
「・・・!!メガル!!!」
よく見ればメガルの傷は一ヶ所だけでは無いではないか!!うつぶせに倒れたメガルの背中のマントは血でにじみすぎて黒いマントが少し赤黒くなっている上にマント以外の所からも血がしたたり落ちている。
「どう・・・して・・・」
日向は今にも溢れそうな涙を目に溜め込んで言った。
「どうして・・・何でこんなになるまであたしを守っちゃったのよ!!」
そして、急いで着ていた上着を脱ぐと、自分のブラウスをちぎりだした。
「待ってて・・・今手当てしてあげるから・・・!」
そしていざ布を巻き付けようとしてマントをめくると・・・
「あれ?」
実際に傷ついていたのはわずかではないか。
『クックックックック・・・!バカ正直なヤツだなお前は。ハッタリに決まってンだろこんなモン!はっはっはっはっは・・・!』
「な・・・何でハッタリなんか・・・」
あまりのショックでその場にへなへなと座り込みながらも、日向は聞いた。
『「オレがお前をかばって大けがをした」としたら、お前がどんな行動をするのか見たくってな。』
ズゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・
『!?』
日向を怒りのオーラが包み込む!
『な・・・何だ!?』
時既に遅し!!
ドッカ〜ン!!
日向はついにキレた。
「あなた!わたしを騙したのね!!ひどいわよ!あたしは本気であんたのコト心配したのに!!何が『ハッタリに決まってンだろ』よ!!冗談じゃないわよ!!もう知らない!!あたし一人でメーシャを探してザダーザムに帰る!!!!」
そして日向が外へ出ようとしたとき、
『だからお前一人じゃ無理だって。何回も言わせんな。』
メガルは日向を引き止めようとするが怒りで動揺している日向は何も聞こうとしない。
「もうあなたの言う事なんて聞かない!!どこまでハッタリかわからないもの!あ、ひょっとしたら全部ハッタリなのかもね。そうよね!じゃ、あたしもう行くから。」
言うことを全く聞かない日向にメガルはツッコミを入れた。
『通信機も持たずにこのレーザーの雨の中をどうやって「メーシャ」を探すんだ?』
びくん!
やっと日向は止まった。確かにいくら何でもこれはハッタリではなく事実だ。通信機がなくては自分一人ではメーシャに会う前にこのレーザーで死んでしまうコトだって無いわけではないのだ。
日向は少し考えた後、
「じゃあ、通信機を返してよ。」
『バァロゥ、そう言って素直に返すアホな悪役が何処探したらいるんだ?』
「そうよね、わかったわ。あたし考え直す。しばらくここにいるわ・・・。」
と言ってわざとメガルの隣に座った。そしてちらっとメガルに目をやると、何と!通信機があるではないか!!
(思った通りだわ・・・!)
「スキあり!!」
通信機を奪おうとした瞬間!!
ドドドオ〜ン!!
猛烈な揺れが日向達を襲った。その影響で日向はバランスを崩し、あまつさえメガルに倒れ込んでしまった。
「きゃああ!!」
『ちっ往生際の悪いヤツめ。ここを出るぞ!』
「ちょっと!さっきあんたは『このレーザーの雨の中を』って・・・!」
『今はンな事言ってる場合じゃねぇ!!』
言うが早いか、メガルはあたしを担ぐとまた走り出した。すると、その直後に今まで日向達を隠していた巨大なツルがミシミシと音を立てて最後には崩れてしまったではないか!
(危なかった・・・)
『おいっ日向!』
いきなりメガルが呼ぶので振り向くと目の前に日向の通信機があるではないか!
「これ・・・返してくれるの!?」
『ああ、今だけな!ソイツを使ってあの戦艦の中のヤツに乱射をやめるように言え!!』
日向は少し迷った。
本当にあたしにそんなことが出来るのかしら・・・?もし失敗したらあたしたちずっとこのまま・・・
しかし、やれば成功する確率もある!ゼロじゃあない!!
「・・・わかったわ!やってみる!」
それだけ言うと、日向は通信機を受け取り、OMZに連絡してみた。。。。
が「・・・・メガル・・・ど・・う・・・しよ・・・う・・・」
日向の様子が尋常ではない。それどころか何らかの恐怖で怯えているようだ。
少しその辺が気になりながらメガルは答える。
『ど・・・どうした?何かあったのか?』
「つ・・・つながらないの・・・!」
『何ぃ!もう一回かけてみろ!』
「この「OMZネットワーク」は絶対一回でつながるようになってるの!でももう一回かけたわよ!でも・・・つながらないの!どうしよう!!!こわいよ!!あたし達ずっとこのままなの!?」
もう日向の心は不安と恐怖でいっぱいだ。さっきまでのような虚勢はもう張る事が出来ない。
ただある一つのことを念じ続けるのみだ。
------カックスに・・・会いたいよ・・・もう一度・・・カックスに会いたいよ・・・!!!-----
肩に担いだ日向の不安と恐怖が十二分に伝わってくるメガルはこうなったらどうにかして自分が乱射を止めなければと思った。
(こうなったら・・・最後の手段だな・・・一度日向をOMZに戻すか・・・。またかっさらえばいいことだし。)
『日向・・・こうなったら最後の手段だ・・・。目を閉じろ!』
「えっ!?まさか・・・あなたと心中しなきゃなんないとか・・・」
『バァロゥ、オレだってまだ死にたかねぇよ。いいからさっさと閉じろ!じゃないとホントに死ぬぞ!』
「う・・・うん・・・」
半信半疑で日向は目を閉じた。そして・・・
メガルは戦艦の方に意識を集中する。
『・・・どうやら戦艦の中央司令室のコンピューターがコンピューターウイルスに感染したみたいだな・・・』
?「コンピューターウイルス」って・・・
『そっちがその手ならこっちも・・・!』
!?何する気なの!?
『コンピューターウイルス注入準備完了・・・』
バカッ!何であんたまで注入してんのよ!!
日向が目を開けて文句を言おうとした瞬間!
『ワイルド・スナイパー!!』
ギュオオオオオオオオ・・・・・!!
「!?!?!?」
メガルの戦艦に向かってかざした両手の間からいつもの黒い竜巻が発生した。
日向はメガルの肩から離れ、黒い竜巻に包まれたまま、戦艦までまっしぐら!!
ってちょっと!これって結局あたし死んじゃうんじゃない!!
誰か!メーシャ!カックス!ロザック!メサス!!072!!螢さん!!渦殊君!!
誰か助けて・・・・・