第7話 叶わぬ思い・前編
「あきらめる」のと・・・・
「見送る」のと・・・
あなたはどちらが幸せですか?・・・
じゃりっ じゃりっ じゃりっ じゃりっ
いや、そんな別に砂利があるからこんな音が出るんじゃなくって、この城中にからまってるツルを踏むとこんな音がなるの。なんか気持ち悪いケド。
それにしても・・・
「ねぇ、メーシャ・パプリース。」
『いやだなぁ、僕達もう知り合いでしょう?「メーシャ」でいいよ。』
「うん・・・じゃあ、ねえメーシャ。」
『何だい?』
「出口はまだなの?」
『うん・・・まだ・・・みたいだなぁ』
「あたしもう疲れて歩けないわよぉ
?」もう疲れて足はガクガクしてもうほとんど感覚ないし、のどもカラカラ、汗はダラダラ、もー最悪な状態!!
072にでも乗りたい気分よ全く。。。。
!そうよ!「乗りたい」じゃなくて「乗れば」いいのよ!そうだわ!その手があったのよ!!
「ねぇ072・・・ってあれ?072?」
後ろからついてきていると思った072がいない。何処に行ったんだろう?
「ぜーろなーなにぃ
〜〜〜!?!?!?」『072がどうしたの!?』
「072が・・・いないのよ!」
『何だって!?おい、072
―――!!!!』二人で必死に探すが072は見つからなかった。それどころか、しばらくするともっと大変なことが起こった。
「ど・・・どうしよう・・・」
072の事しか頭になかったため、それを探し回ってしまったが為についに日向は・・・
「迷子になっちゃった・・・メーシャとはぐれちゃったよぉ・・・またあたし独りぼっち・・・」
あたしはいつからこんなに独りぼっちが怖くなったんだろう?元の世界ではいつも一人でも平気だったはずなのに・・・
とにかく、この「独りぼっち」状態を脱出するためにも072を探すことにした。
「0
―7―2―――!?ど〜こ〜?」真正面にある一番太いツルの向こう側を探そうと歩き出したとき、後ろに人影が!
きっとメーシャだ!やった!!
「メー・・・」
しかしその人影は無情にも日向を包み込んだ。
『見つけたぜ・・・日向!!』
!しまった・・・!メガル・クライジストンに見つかっちゃった!
もはや逃げる間もなく、日向はメガル・クライジストンに捕まった。
『勝手に抜け出しやがって・・・ただじゃ済まねぇぞコラ!』
・・・しょうがない・・・抜け出したのはわたしだもの。もう抵抗の仕様もないし・・・。
覚悟を決めなきゃ・・・ね・・・
そして日向は眼を閉じ、黒い竜巻でメガル・クライジストンと共にその場から消えた・・・。
*
「ついに来ましたね・・・」
「ええ・・・」
「ここがラルーシア城か・・・」
「何かホンット「いかにも」って感じのトコねぇ。」
「全くだ。」
巨大なツルに覆われたラルーシア城を目の当たりにした5人は言った。
「これからここで大乱闘が繰り広げられるのね・・・」
「・・・て傍観者ヅラして言うなよ螢。」
「二人とも!今からはホント冗談抜きでケンカしてる場合じゃないからね・・・!」
メサスがそう言ったのは、もう自分たちの前方にモンスター達の大群が現れたからだった。
「!まだこんなにもいたのか!?」
「本拠地を潰さない限り、おそらくいくらでも出てきますよ。」
「じゃあ・・・準備はいい?」
「おう!!」
メサスの問いにみんな答えた。OMZも後方から
「了解」
という放送が聞こえてきた。
「いっくわよぉ
?!」突撃!!!!
こうして日向を除くトリオファイター達がラルーシア城への総攻撃を掛けた・・・
が。「それ!」
「やぁ!!」
「!?!?」
いきなり後方から聞いたことのない二人の声が聞こえ、二方向から炎の腕と、雲の腕が伸びてきて炎の腕はロザック達を、雲の腕はメサス達をさらっていってしまった・・・!!!
「メサース!!ロザック義兄さん!!螢!渦殊!!!」
「何・・・してるのよ!!」
「早く行きなよバカ!!」
もがきながらメサスと螢が言う。
「しかし・・・」
カックスがためらっていると雲の腕の方から
「俺達にかまうな!!」
「はやく・・・ヒューガを助け出してやれ・・・!!!」
最後のそのロザックの言葉に心を打たれたカックスはついに折れた。
「・・・わかりました・・・。」
それだけ言うと、カックスは猛スピードでラルーシア城の中へ突っ込んでいった・・・。
あ、もちろん死ぬワケじゃないんだけども。
*
シュウゥゥゥゥ・・・
ついについた・・・あたしが最初に来た部屋・・・
これからあたしは何をされるのかしら・・・?やっぱり・・・殺されちゃうのかな?
『何考えてんだバカ。目ぇ開けてよく見てみろ!!』
「えっ・・・!?」
何が「最初に来た部屋」よ、バカバカ!ここもっと危険な場所じゃない!
そこはラルーシア城の外にからまっているツルの上だった。
まさか・・・ここから突き落として殺そうってんじゃあ・・・
それは困るなぁいくら何でも。殺される覚悟はできてるケドちょっとここから落ちるのは・・・
『だからお前は殺さねぇよ。』
「!どうして?あたしあなたに黙って部屋から出たのに・・・。それにあなたも・・・」
『オレは「ただじゃ“済まねぇ”」と言ったはずだぜ?』
「?」
ただじゃ・・・「済まない」?どういうこと?普通こういう場合ただじゃ「済まさない」って言わないかな・・・?
『ここへお前を連れてきたのはここの常識を叩き込むためだよ!・・・見な!!』
バサァ!先が二股に分かれた自分のマントを翻しながらメガル・クライジストンは城の下の方を指差した。おそらくあの辺が城の入り口辺りなのかな?
でも、そこにはモンスターが多数群を成していた。
『今、見ての通りこの城はモンスターの住処になってる。そんな中を城の構造もロクに知らねぇ人間が勝手にうろついたら、最悪の場合どんな事になるかいくらお前でも想像がつくだろう!!』
言われるままに想像したことをそのまま口にした。
「さ・・・最悪の場合モンスターの餌食とか・・・」
まさかとは思いながら冗談半分で口にしたのだが、
『そうだ。ここのモンスター達は飢えてるからな。』
「うそ・・・っ!!」
『ウソじゃねぇよ。現に、ここの国の住民が何人も喰われてるんだ。お前はたまたまラッキーだったんだよ!』
?ふと気になった。ここの・・・住民?
「住民って・・・ここ、モンスターの国じゃなかったの!?」
『バァロゥ。ここはモンスターに乗っ取られちまったんだよ。詳しく話せば長くなるから今は話さねぇけどな・・・。元はラルーシアという、一つの平和な国家だった・・・。』
言いながらメガル・クライジストンは目を閉じた。まるで、昔の平和だったころのラルーシアを回想しているかのように・・・。
・・・なんだかわからなくなってきた・・・この人は本当に悪い人なの?私にはとてもそうには思えない・・・。まさかこれも作戦?うそよ。だって本当に悪い人ならあの時迷ってたあたしにも魔法でもかけて一生城から出られないようにしとけばいいのに・・・。それでそのままモンスターの餌食にしちゃえばいいのに。
まだ目をつぶっているメガル・クライジストンに悪いとは思いながら聞いてみた。
「ねぇ・・・何で・・・あたしを殺さなかったの?」
すると、メガル・クライジストンはゆっくり目を開けながら、
『フ・・・簡単な話だ。それは
--------!』いきなり会話を中断すると、何かを感じ取ったかのようにあたしを突き飛ばした。
「何す・・・!」
落ちそうになったじゃない!と言いたかったのだがそれを言う前にメガル・クライジストンが叫んだ。
『伏せろ!!』
その言葉が終わるか終わらないかの内に
ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!!!
いきなり無数のレーザー光線があたし達を襲った!!
「きゃああああ!!」
その時、あたしの脇腹と左肩、そして膝と首筋あたりに激痛が走った。
「うぐっ!」
た・・・立てない・・・痛・・・いよ・・・
意識ももうろうとしていく・・・目も霞んできた・・・。
薄れていく意識の中で向こうの方から声が近づいてきた。
『ちょっと待てよおい・・・。あれお前んトコの戦艦じゃねぇか!オレはいいとして何で日向まで・・・っておい!日向!!しっかりしろ!!!
ひゅうが!!・・・・・』何も聞こえない。ただ何となく「生きてる」って感覚だけがある。いずれはこれも消えて死んじゃうんだろうな・・・あぁあ、せめて死ぬ前にもう一度カックスに会いたかったな・・・ぁ・・・・