第5話 メガル・クライジストン
黒と白・・・・・
光と闇・・・・・・
あなたはどちらを選びますか?・・・・・・
『日向・・・・日向・・・』
!ここは・・・?
『日向・・・』
あなた・・・は・・・!!
早乙女君!!やっぱりそうなのね!死んでなんか・・・いなかったのよね!
生きてたのよね!!!
・・・そうだよね・・・・そうなんだよね・・・?
そうなんでしょ?信じていいんだよね・・・?
今度こそ・・・・本当に・・・・・
『日・・・向・・・ご・・・め・・・・ん・・・・』
いきなり早乙女の口から真っ赤な鮮血がどんどん吐き出されてきた。そしてついには自分が吐いた血の中へ倒れて・・・・
う・・・そ・・・うそよ・・うそよ!!こんなの信じない!!!うそよ!!いや!!
いやあぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!
*
がばっ
最後の自分の声で目が覚めた日向は急いで辺りを見回した。
やはり、今自分の見た光景はどこにもない。
―また・・・あの夢を…―
しかし・・・今自分が何処にいるのかはわからなかった。少なくとも、今までに来た記憶は無い。
「ここ・・・・は・・・・?」
『魔法の国:ラルーシアのラルーシア城の中だ。』
!今までに聞いたことのない声だったので少し驚いた。いや、かなり。
私の知っている人にこんな人いたかしら・・・?
声の主を見てみると、何となく見覚えのある背格好だ。でもどこで・・・
すると、その相手は少し笑って
『フ・・・見てて全く飽きが来ねぇな、お前は。』
「・・・・・・」
『・・・普通そこで「自分がどうしてここにいるのか」ぐらい聞くもんだがなぁ?』
!そうだ!私はどうしてここにいるんだっけ・・・?確かさっきまで早乙女君・・・いやいや、カックスと一緒にボスモンスターと闘ってて、それでロザックの機体が傾いてきて、それであたしは落ちて、それから・・・・
!思い出した!今目の前にいる人はあたしを助けてくれた人だ!!確か意識を失う寸前、真っ黒な竜巻が出て、その中から人が出てきてあたしを受け止めてくれて・・・・
・・・この人命の恩人じゃない・・・・!
『???何だ?人のことジロジロ見て。』
「あ・・・・そ・・その・・・え・・・と・・・」
あーもー!自分で言っててじれったい!どうしてあたしは素直に自分の気持ちが言えないの!?
『?』
「え・・・と・・そのぉ・・・」
『何が言いたいんだ!!』
ひゃ!怒らしちゃったっっ ど・・・どうしよう・・・
『早く言えよ。』
「・・・・あ・・・あ・・・・あ・・・その・・・・
ありがとうございます・・・・」『・・・・・あのよぉ』
うっ やっぱ怒られる・・・!
『丁寧語じゃなくてフツーにしゃべらねぇか?』
へ?
『何かこう・・・丁寧語でずっとしゃべられてると何か調子狂うからさぁ・・・』
「う・・・うん・・・」
不意に、何となくこの人の名前を知りたくなった。でもいざ聞くとなると勇気が出ない・・・。
すると向こうの方から
『お前、「日向」(!?)って言うんだな。』
「!・・・何で・・・知ってる・・・の?」
『オレがお前をさらう前に、お前の仲間がそう叫んでた。』
え・・・助けてくれたんじゃなくてさらったの・・・?
「じゃあ・・・あなたの・・名前・・・は?」
『オレか?』
その人の目が少し邪に光る。いや、正式にはそう見えただけであってホントは光ってないけど。
『聞いて驚くなよぉ・・・』
何かもったいぶってるんですケド。
『オレはメガル・クライジストン。一応お前達トリオファイターとかの最大の敵・・・ということになっている。』
「トリオファイターの敵・・・ってつまりあたしの敵!?」
『そういうこった。だからお前を人質にとって残りの奴らにはそう簡単には手出しさせないようにした。』
「ひどい・・・・!」
『ひどくて結構。オレ一応悪役ボス。』
カックス達が手出しできなくても、あたし一人でどうにか・・・!
通信機をとろうと、耳元へ手をやったがあるのは髪の毛とヘアバンドの感触のみ。
あれ・・・・?
『そうそう。言い忘れてたがお前の少々やっかいな通信機は預からせてもらったぜ。』
い・・・いつのまに・・・
『とにかく、今のお前には脱出なんて不可能だ。悪いことは言わん。諦めろ。』
そう言い捨てると部屋の向こうのドアから出ていってしまった。
・・・人質といえど、普通のベッドに寝かせてもらえるだけマシか・・・でも、いつかここを脱出しないとカックス達に迷惑をかけるわ。
待ってて!カックス!!
*
ここは戦艦OMZの中央司令室・・・・
「ロザック大佐!今の戦況はどうなっているのですか!」
「メサス少佐!敵はどのような状況なのですか!?」
「カックスサブコマンダー、次はどのような作戦を!?」
「トリオファイターのケイ様、カコト様!もう一人のファイターのヒューガ様はどうなされました!?」
5人は答えない・・・。特に日向失踪の原因を作ったロザックと、同じ機体に乗っていたカックスは下を向いたまま何も聞こうとしなかった・・・・。
二人の様子を見かねたメサスはとりあえず人を散らせようとしたが今は自分も喋る気にならない。そこで密かにつぶやいた。
「SO
−072(エスオーゼロナナニ)・・・」『ピボーーー★★★』
電子音を鳴らしながら虫型ドロイド、SO
?072が飛んできた。『イマハコタエタクナイ★アトデイウカラモチバニモドッテ★』
「は、はあ・・。承知いたしました。」
SO
−072の一言でみんな持ち場に戻っていった。「・・・くやしいですよ・・・・」
休憩室で壁に義手の拳をぶつけて口を開いたのはカックス。
「何がサブコマンダーだ・・・何が伝説のファイターだ・・・僕はこんな力を持ちながら、大切な人を守ることさえできなかった・・・・あの時、僕がもう少し早く手を伸ばせば・・・・・。」
「悪いのはお前じゃないさ、カックス。悪いのは・・・このオレだ。」
「そんな・・・!」
「あの時オレがお前達の方向へ機体を傾かせたから・・・・ヒューガは手を放さざるを得なかったんだ。」
「でも僕だって、もう少し早く気付けばそれを避けることだってできたはずでしょう!?」
「・・・・・・・・・」
早く・・・助けに行ってあげないと・・・・・
待っててください・・・日向・・・・!
どうか無事で・・・。
そんな二人のやりとりをSO
−072は影からずっと見ていた・・・。そして、静かにOMZの外へと飛び立っていった・・・・。