第3話 出撃!トリオファイター!
開かれた道は・・・・・
いつかきっと・・・・・・
心を開くから・・・・・・・
私たちがパソコンの中に吸い込まれてから何日が経ったのかしら・・・
こっちへ来てから結構経っているような気がするのだけれど・・・。
こっちへ来てからメサス、ロザック、そしてカックスのみんなにいろんな事を教わった。
一応今までにわかったことをまとめると要するにこういうコト。
この戦艦はOMZと言う名前で、カックス達が住む国「ザダーザム」の最高の戦艦だそうだ。カックス達は今この戦艦で、「ラルーシア」と言う魔法の国に向かってるんだって。
どうしてその国に向かっているかというと、・・・・話せば長いコトながら・・・・
最近、この世界の至る所にモンスターが現れては悪さをしているんだって。それで、ザダーザムの上層部の人が調べたら、どうやらそのラルーシアからモンスターが出て行ってることがわかって、それで今そのモンスターの本拠地を攻めるために向かっているんだって・・・・・。
・・・・はぁ・・・何だかここにいると私壊れてしまいそう。
だって私の目にはあの人は早乙女君にしか見えない・・・・・・
休憩室で私がうなっているとカックスが現れた。
「どうかしましたか?」
「・・・・う・・・ううん、別に。」
「・・・・・・・」
カックスは何か言いたげだったけどそれで話題は途切れてしまった。
なんか向こうも何か私に隠してるみたい。
何とか会話を再開しようと必死で話題を探した。そして、ずっと気になっていたことを何とかカックスに思い切って聞いてみた。
「そうそう。その・・・カックス君は・・・」
「カックスでいいですよ。」
「うん・・・じゃあ、カックスはどうしてそんな手になってしまったの?」
「!」
そう。わたしは初めて会ったときからずうっと気になってた。カックスの右手がコンピュータによって作られた義手であること。それも二の腕から下全てという広範囲だから気にせずにはいられなかった。
カックスが早乙女君に似てるからというのもあるけど・・・・・・
「・・・・・これは・・・・・・・」
何だか言いにくそう・・・。悪いこと聞いちゃったかなぁ・・・・。
「―――――これは僕の父にやられたようです。」
「!え?どういうこと?父に・・・・やられたようです?!?!」
「すみませんね・・・僕がまだ本当に小さかった時にやられたようだったので・・・・。とても痛かったのと何だかとてもつらくて悲しかったことしか覚えていませんよ・・・。今ではもうなぜつらく悲しかったのかすらわかりませんから・・・。」
笑いながら語るカックスの顔にはどこか寂しさが隠されていた。
しばらく何を話したらいいのかわからなかった。もしこれが自分だったら・・・もし自分の腕だったら・・・
そう考えただけでとても恐ろしくなった。
「じ・・・じゃあカックスはその事を誰に聞いたの?」
「現在のコマンダー、僕の叔母のザーグ・セレスです。」
「そうなんだ・・・」
「実のところ・・・・彼女はすでに死んでいるんですが・・・」
「(え?)」
声にならなかった。だって・・・だって一度死んだ人間が・・・・どうして?
「ザダーザムでは・・・死んだ人間のつけていた通信機のプログラムを、中央司令室にある特別な映像機械にインプットすると、死んだ人間が・・・まぁ正確には意識体だけですが、甦ることが出来るんです・・・。
叔母のザーグも・・・この方法で―――…」
「やめて!!」
私の中の何かが爆発した。何故だかわからないけど、もうこれ以上聞きたくなかった。そして、爆発した勢いでもう制御しきれなくなった言葉がどんどん溢れ出してきた。
「意識体だけろうと、死んだ人間が甦るということには変わらないんでしょう!?じゃあその人は何で死んだの?その人は与えられた生を精一杯全うして、それで死んでいった人でしょう!?!?志半ばで死んでしまった人だっているかもしれない。でもそれは運命じゃない!あなたたちのその機械で、望まない生を得てしまった人だっているかも知れないのに・・・・・!!!」
はあっ はあっ はあっ はあっ ・・・・・・・
一気にしゃべったせいで、すごく疲れて肩で息をしていた。
頭の中もぐちゃぐちゃでちっとも整理が付いていない。
でも、ただひたすらあるコトに向かって激怒していた。
死んだ人間が、いとも簡単に甦ってしまうという、カックス達の世界の常識に対して・・・
「・・・・あなたに反論をする気はありません・・・。」
少し呼吸を置いてからカックスがまたしゃべりだした。
「でも、僕は死んだ人間をなにも片っ端から全て甦らせるとは言ってませんよ?
国としても、そんな事をすれば、機械は一台しかありませんから当然作業が間に合いませんし、死んだ人間の通信機には必ず特殊プログラムとして「遺言プログラム」が働くんです。それによってその人が蘇生を望んでいるのなら甦らせる・・・というものです。」
「・・・・・・・」
「――と言っても、「単なる言い訳だ」として片づけてしまえばそれまでですけどね・・・。」
そう言ってまた苦笑いをした。
そして日向が目を離したときに、カックスは立ち上がり、休憩室の一番大きな窓の側に立って遠くの空を眺めながら窓に映る自分を見て少し歯がみし、こう言った。
誰にも聞こえない声で、ひっそりと、しずかに・・・。
「――――――時間が・・・・・ありませんね・・・・・」
*
二人の会話をずっと影から眺めていた螢、渦殊、メサス、ロザックの一行・・・。
「あ?あ、いらん事いっぱいいっぱいペラペラしゃべっちゃってぇ?まぁ?。」
と言ったのはメサス。
「でも俺二人がうらやましいぜ。特にカックス!ラブラブじゃねぇか?全く?・・・」
「ンなことカンケーない!!!」
メサスとロザックの漫才が始まった。
「でもってさぁあ?」
螢である。
「あたしらは何でこっちに来ちゃったワケ?いーかげん知りたいわよ。」
「オレもだ。」
と渦殊も同意。
「そ・・・それはだな・・・」
「話せば長いけど、いい?」
「もちろん!」
二人とも同時に答えた。実はこの二人、結構気が合うのかも知れない・・・。
「あんた達はザダーザムの伝説のファイター、「トリオファイター」としてこの世界に召還されたのよ。」
「トリオファイター?」
「そうだよ。この世界が破滅に向かうとき、トリオファイターが召還されてそれぞれの国から選ばれた者達と共に闘う。そしてこの世界を救う・・・という、まぁ普通の伝説だな。」
「で・・・伝説って・・・」
「でもサ、それぞれの国から選ばれた者達って?それに、この世界にザダーザムとラルーシア以外に国があんの?」
「正直誰が選ばれるのかはわからない。一応ザダーザムからはお前達トリオファイター自体と俺達の合計6人だ。あとはわからん。ただその者達が選ばれるのは、今の二国の他に、雲河の国:チャージャンに、常夏の国:オーガナだ。」
「へぇ?。で、あんたらはどーやってそれを知ったワケ?」
「ラルーシアにある、「ドイレアス末決巻(グルダード)」という書物に、その全てが書かれているらしいけど・・・。あたし達はカックス義兄さんがカックスのお父様から聞いたのを教えてもらっただけよ。カックス義兄さんのお父様はラルーシアで修行されたことがあるから。」
「話を続けるぞ。」
「え、まだあるの!?」
「ったりめーだボケェ。
でもって、これからもっとラルーシアに近づいたら、俺達とお前らはラルーシアに出撃する。一応今から武器は渡しとくから、心の準備しとけよ。まぁ、ヒューガにはカックスから渡しとく様に言っておこう。」
と言って渡されたのは奇妙な形の物体。
「ぶ・・・武器ってまさかコレ?」
「コレとは何よコレとは!通信機と言ってもらいたいわ!」
「通信機でどーやって戦うのさ!」
「その通信機はただの通信機じゃねぇ。ケイに渡したヤツは、精神エネルギー・・・まぁ気合いとも言おうか、それを集中させるとレーザーに変形する。カコトに渡したヤツは同じようにすると大きさ変幻自在のブーメランになるんだ!れっきとした武器だろ?」
「なるほど」
「おもしろい!」
「・・・あんたら、遊びじゃないんだから・・・」
*
ピーピーピーピーピーピーピーピーピー
ラルーシアに急接近! 時は来た!!
トリオファイターよ!!! いざ!!!!
出撃せよ!!!!!
「・・・・どーやら思ってたより早く出番が来ちまったようだな・・・」
「準備はできた!?」
「な・・・何とか・・・」
「皆さん!準備はできていますか!?!?」
言いながら走ってきたのは日向とカックス。日向は既にカックスから通信機を受け取っている。
「おう!バッチリだぜ!」
「(ウソばっか・・・!)」ロザック、カックス、日向を除く一行は思う。
「じゃあ、行きますよ!一つのAUXに二人ずつ乗って下さい。AUX45にはメサスと螢(!)、AUX83にはロザック兄さんと渦殊(?)、そしてAUX99には僕と日向(!?)が乗ります!
・・・用意はできましたか!」
「了解(ラジャ)!」
「O.K!」
「じゃあ・・・行きますよ・・・・・!日向しっかり捕まっていて下さいね・・・」
「わかった!」
なんだかとっても緊張してきたぞ・・・!でも、これから闘いに行くんだ!あたしたちは!もう後には退けない・・・・・!!!
ついにハッチが開いた。そして・・・!
「AUX45, GO!」
「AUX83, GO!」
そして・・・・
「AUX99, ・・・GO!!!」
全てのAUXが、轟音をたててOMZを飛び立っていった・・・・・。