第13話 魔導師
父の背中に僕がいる
僕の背中に過去がある
過去は誰が決めているの・・・?
「来てやったぞ!どこにいるんだ!!」
ラルーシアの荒れた大地に着地したカックスは虚空の空に向かって叫んだ。
返事はなかった。
「くそ・・・ラルーシアに来いとしか言ってなかったからな・・・」
ピコピコピコ
通信機に通信が入る。
「何だ?・・・何?
「ソノママシロノナカニハイレ オモシロイモノヲミセテヤル」だと?」
どうせロクなものがあるはずがない。だが何らかの情報を得ることはできるはずだ。
そう信じてカックスは城の中へ足を進めた。
「・・・カックス・・・一体何しに行ったのかしら?」
『ラルーシアに行くとか言ってたけど。
まぁ僕らはここで待機しといたほうが無難だね。』
・・・・メーシャはあのこと・・・何か知ってるのかしら・・・
「ねぇメーシャ。」
『なんだい?ヒューガ。』
「このOMZの中央司令室の下に隠し部屋があるの、知ってる?」
『隠し部屋!?』
「知らないの?中央司令室の、ホラ、一枚だけちょっと古い感じのパネルがあるでしょ?
パネルに書かれた文字を数字に直して、そこにあるダイヤルを数字の通りに回すのよ。
そしたら更にその下に続くらせん階段があって・・・。
女の人の幽霊が出るのよ〜〜〜!!!」
『(女の人の・・・幽霊?)もうちょっと、その女の人の容姿について詳しく話してくれないかな。』
「えっとね・・・確か大きな襟のあるマントを着てて、中は真っ黒な服を着てるの。
顔は・・・確か特別な形の通信機を着けてたわ。色んなコードが額に集まってるの。
目は確か・・・カックスと似てたような・・・」
『(元コマンダー・・・ザーグ・セレス!?嘘だ!!だって彼女は・・・!?)』
驚嘆の色を隠せなかった。
確かにザダーザムは死人をスクリーンの中に蘇らせる技術を開発した。
でもなぜ彼女が!?彼女がそんなことを希望したのか!?
「どうしたの?そんなに驚いて。」
『ヒューガ・・・ちょっとその部屋まで案内してくれないか・・・確かめたいことがある。』
「えぇ〜!?またあそこに行くのぉ!?嫌よ・・・だって怖いものあそこ・・・」
『僕も行くから、心配しないで。』
「メーシャ・・・わかった。付いてきて。」
二人はハッチを後に、中央司令室へ向かった。
一方こちらラルーシア。
じゃりっ じゃりっ じゃりっ じゃりっ・・・
「くそ・・・城の一体どこへ行けばいいんだよ・・・」
ピコパコピコ
また通信がきた。
「何だ今度は・・・「サァテ・・・コレデチュウモンハサイゴダ。
オマエノチチオヤノナヲオオゴエデサケンデミナ!ソウスリャリッパナジョウホウニデアエルゼ」だと?
・・・・なめられたもんだな・・・まぁいい。これで本当に最後なら・・・」
すぅ・・・カックスは大声を出すために息を深く吸った。そして。
「サイダット・シュード!!!!!」
するとどうだ!息をする間も無く誰かに後ろから首に棒のようなものを当てられた。
「なっ・・・!」
「今、『サイダット』と言ったか・・・」
後ろの人影は威圧感を込めた声で言った。カックスよりは年上であろう。
「誰だお前は!?」
「ラルーシアはドイレアス大魔導師:カングヌス導師の弟子!フィーゼント!!
ここに無念のうちにお前に倒された導師の仇を討たせてもらう!!」
そう言い終わるか終わらないかのうちに、
首にあてられている棒を握る手に更に力がこもる。
息が止まりそうだ。
「ま・・・待ってくれ!ぼ・・・くは・・・違う・・・人違いだ・・・!!」
「黙れ裏切り者!!導師の恩も忘れて!!違うかサイダット・シュード!!!」
「違う・・・僕は・・・サイダットじゃな・・・い・・・
ぼくは・・・カックス・・・カックス・シュード・・・だ・・・
サイダットの・・・息子です・・・」
すでに息が止まりかけていてかすれた声を必死で絞りだす。
「奴の息子だと・・・!?さては父親の命令でまたこの国を滅ぼしにきたのか!?」
「ちが・・・・ぼく・・・は・・・ちちを・・・探し・・・て・・・」
意識が遠くなる。手に力が入らなくなる。ここで僕は・・・死ぬのか・・・
「た・・・す・・・け・・・・・・・」
がくっ 意識がなくなった。
首を絞めていた棒に抵抗を感じなくなったのを確認してフィーゼントはカックスを放す。
「とどめだ!!」
「待ってフィーゼント!!」
制止の声をかけたのはまだ幼き盲目の少年:マスカレードだった。
「ここは真っ暗やで?ひょっとしたら人違いやったかもしれんやないの!
明るいトコに連れてって、それで事情聞いてからでも遅くないんやないの?」
関西弁でしゃべるのは色黒の踊り子:カルドネード。
「お願い!その人を殺さないで!」
「・・・・フン・・・好きにしろ。」
「わかったわ。フィーゼント、一人じゃ持てへんから一緒に担いでくれる?」
「マスカレードがいるだろう。」
「マスカレードは目が見えへんの!!」
しぶしぶ手伝うフィーゼントだった。
「・・・・・ボクも・・・目が見えたらいいのに・・・」
「ここよ。ちょっと待っててね。
えーと・・・『おなじ くにに いきて ちがう ものを もとめ
いつか かなう ものを きっと かなう ものを
ほこりたかき きみがいるから』っと!・・・あれ?開かない・・・」
日向が頭を悩ませると、メーシャが前に進み出てダイヤルを回し始めた。
『こうじゃないかな・・・
(昔誰かから聞いた事のある詩だ・・・とても懐かしい詩・・・)
同じ 世界に 生きて
違う ものを 求め
きっと 見つかる ものを
いつか 叶う ものを
誇り高き 君がいるから
(プシュン!!)ほら、開いた!』
奥に続く階段がある。
『ここを降りるのかい?』
「う・・・うん・・・」
降りたくない・・・
『大丈夫だって!僕がいるよ!!』
「そうね・・・」
やっぱり嫌なのは変わらないけど、仕方ないか・・・
しばらく降りるとまた例の緑の光が!!
「きゃあああああああ!!」
『!!!!やはり・・・あなたは!!』
「また会いましたね。どうしましたヒューガ。
それと・・・あなたはもしやサイダットの作っていたというサイボーグかしら?」
『ぼ・・・僕には名前がある!メーシャ・パプリースだ!!
サイダットが与えてくれた!!』
サイダット?与えてくれた?サイボーグ??
「お黙りなさい!人造人間。あなたはサイダットに作られておきながら、
なぜサイダットをあんな目に遭わせたのです!!」
人・・・造・・・人・・・間・・・?
『違う・・・僕は・・・』
「何が違うのです。
現にあなたが現れるまで”ワイルド・スナイパー”などというものは存在しなかった!!
全てを破壊し、焼き尽くし、奪い尽くす・・・あの邪悪の根源は存在しなかった!!」
ちょっとまって、「ワイルド・スナイパー」?
「ワイルド・スナイパーって、メガルの技の名前じゃないの!?何か関係あるの!?」
「私はこのスクリーンから全てを見てきた・・・
メガル・クライジストン。そもそもあれこそが・・・」
『もうやめてください!!』
ふと見るとメーシャは両耳を塞いで叫んでいた。
『やめて・・・僕が壊れる・・・僕が・・・・壊れるから・・・
壊れてしまうから・・・』
「そうよ。壊れてしまいなさい。あなたなんか、壊れて、無くなってしまえば・・・」
「お願いやめてあげてザーグさん!!」
メーシャを抱えるようにしてかばう。体中が恐怖で震えている。
「言い過ぎよ!彼が何をしたのか知らないけど、そこまで言うことないじゃない!
彼にだって、存在する権利はあるんだから!!」
「あなたは何も知らないからそんなことが言える。
何も知らないのよ・・・彼が今までに殺めた命の数を・・・陥れた人々の数を!!」
『や・・・めて・・・制・・・御が・・・利かなく・・・なる・・・!』
ドクン・・・メーシャの中で何かが目覚めようとしている・・・
「そうしてまた破壊を繰り返すの?」
『(嫌だ・・・やめて・・・破壊しないで・・・
誰か助けて!!072!!!)』
メーシャの中の何かが爆発しようとした瞬間、どこからともなく072が飛んできた。
『ピボーーー!!!!!』
何らかの光線をメーシャの通信機に送っている。
すこしずつメーシャが落ち着きつつある。
「(・・・・何?・・・何があったの・・・???)」
「所詮その機械だって・・・」
「やめてって言ってるのが、わからないの!?」
日向がついにキレてザーグを思いきり睨みながら怒号を浴びせた。
「何よ!何かにつけてメーシャを傷つけて、しつこいのよあんた!!
それでも元コマンダーなの!?
あたし、初めてあんたに会ったときはすっごくすてきな人だと思ったけど、
今はそんなことかけらも思ってないわ!!
壊れて、無くなってしまえばいいのはメーシャじゃなくて、あなたの方よ!!」
『ピューーーーー!!!!』
072が突如とても甲高い声で鳴いた(?)かと思うと、スクリーンが消えた。