第14話  孤独

どんなにつらくたって・・・

             自分が自分でいられるなら・・・・

                            それで十分幸せだよ・・・

コワレテ ナクナッテシマエバイイ・・・

オマエナンカ ナクナッテシマエ・・・

キエテシマエ・・・

オマエナンカ・・・オマエナンカ・・・

・・・誰?僕をいじめないで・・・僕を壊さないで・・・

コワレテシマエ ナクナッテシマエ ダレモオマエナンカヒツヨウトシテイナイ

どうして?僕を作ったのはあなた達でしょう?

マチガイダッタ ミスダッタ オマエナンカウマレテクルハズジャナカッタ

うそ・・・嘘って言って!!

オマエハヤクニタタナイ イルダケムダダ ジャマナンダヨ・・・

邪魔・・・僕は・・・必要とされない・・・?この世界中の誰にも・・・?

コワレナイナラセメテオレタチノテデコワシテヤルヨ

嫌だ・・・やめて・・・お願い!誰か助けて!!僕は消えたくない!!

「メーシャ!メーシャ!!しっかりして!!」

『・・・!ヒューガ・・・?ここは・・・』

「中央司令室の隣りのロビーよ。大丈夫?あの後ずっと気を失っていたから・・・」

どうやら僕はロビーのソファに寝かされているみたいだ。

ヒューガは僕の頭上に腰掛けている。

『あの・・・後・・・』

僕は頭の中を整理するのに時間がかかった。

一体何があったの?僕は何をしていたの?

『ピーボ、プポプポ、ピポッポー、ピッ★』

072が説明をしてくれたおかげで、ようやく経緯がわかった。

そうだ、あの時、僕はあの人に・・・

「ねぇメーシャ、教えて。」

『何だい?』

「・・・私あなたについてわからないことが多すぎる。特にさっきのザーグさんとの会話で不可解な点がいっぱい出てきたわ。私にもわかるように説明して。」

『・・・それは・・・』

言うわけにはいかない。少なくともヒューガは知っちゃいけない。知らせたくない。

「まさかあなたまで、私に『今はその時じゃない』とか言うんじゃないでしょうね。」

『!?誰がそんな事を!?』

「前にカックスにザーグさんとの関係を聞こうとしたら、そう言われたの。

でも私、そういうふうに言われるのが、一番不安なのよ。

・・・・何か私が信用されてないみたいで・・・怖いの・・・」

カックス君とザーグさんか・・・確かにあの二人の関係は言いづらいな・・・

でもヒューガのその気持ち、僕には痛いほどわかる。同じ経験を僕もしてきたから・・・

「ねぇ、メーシャは私を信じてくれてるの?」

『僕は・・・』

どうなんだろう?僕だって不安だ。この人にさえ、必要とされてないとしたら・・・

コワレテシマエ キエテ ナクナッテシマエバイイ・・・!!!

怖い・・・!!

『ヒューガは・・・僕のことどう思ってるの?必要としてくれているの?』

「ザーグさんとのこと?

私ははっきり言ってあなたが過去に何をしたのかなんて知らない。

それがどんなにひどいことだったとしても。

でもね、それでも私はメーシャに消えてほしいなんて思わない。

私には、あなたが必要だもの。」

『ヒューガ・・・・ありがとう・・・』

嬉しかった。本当に。

だって僕のことを必要だと言ってくれたのはサイダットだけだったもの。

でもそのサイダットも今はいない。誰も僕を必要としていない。

でも、今ここにいた。僕を必要としてくれる、大切にしてくれる人が。

『信じるよ・・・ヒューガのこと、信じる・・・』

嬉しさで涙が出そうになるのを必死でこらえていた・・・

 

一方。かなり久しぶりな渦殊達の一行。

「なぁロザック〜」

「何だようるさいな。」

「俺達ここに閉じこめられてどれくらい経つかな〜」

「お前さっきからそれしか聞いてないぞ」

「だって仕方ねーだろ?何がどうなってんのかもわからねーうちに閉じこめられて、

一体どーなってんだここは!」

バン! 牢の壁を叩くと、外の方で「カシャン」という何かを落とした音がした。

「?」

「誰かいるのか?」

二人が外をながめると、小さな男児が落としたものをせっせと拾っている。

全て拾い終わるとまたこちらへ向かってくる。

「あ・・・ああぁ・・・あ・・・だっだ!」

牢の近くまで来ると男児は訳のわからない言葉を発しながら今持ってきたものを

格子のすき間から牢の中へ入れてきた。

「何だこれ・・・食いモンか?」

「だっ!」

「食べろって?」

「だぁあ!!」

何が嬉しかったのか、男児はとても嬉しそうな顔をしている。

「しっかしよ〜俺達今どちらかっつーと食いモンよりもここの牢の鍵欲しいんだけど。」

「コラ!無理言うな!この子だってこの子なりに何とか俺達にいい思いさせようと努力してるんだぞ!飯持ってきてもらっただけでも感謝しろ!」

はっ ふとあることにロザックは気づいた。

何やら手にした袋の中を探している男児にロザックは聞く。

「お前・・・もしかしてしゃべれないのか・・・?」

「・・・・」

男児は探し物の手を止め、一瞬静止すると、徐々に肩を震わせながら泣き始めた。

「あ・悪い悪い!嫌なこと聞いたか?ごめんな。嫌ならいいんだ、答えなくても。」

すっ 男児は探し物を探し当てたらしく、手に何かを握りながらしゃべった。

「・・・・言われてるんです。本当は姉に『しゃべるな』って・・・」

「なんだ!しゃべれるんじゃね・・・」

「シッ 大声でしゃべるな渦殊!お前、姉っていうのは・・・」

「オーガナの支配者、ネーザス・トーンです。

紹介が遅れてすみません。僕は弟のグングース・トーンと言います。

「じゃあ弟王子じゃないか!!何で王子がこんなこと・・・」

「僕は姉に逆らえないんです。姉の言うことなら何でもします。口答えだってしません。

だから・・・オーガナの政治も、ほとんど姉の一存のみで動いているんです。」

渦殊が口を挟む。

「それって思いっきり独裁じゃねぇか!お前の立場どうなんだよ!王子なんだろ!?」

「それは・・・」

言いかけたとき、グングースは何かを察したらしく、手元で何かを書き記すと

先程探し当てたと思われるものと一緒に牢に投げ込む。

「そこで何をしている!!グングース!!」

「だっ・・・・・」

「早く上ってこい!!」

「だぁ!」

タタタタタタタタタ・・・グングースは足早に去っていった。

「なぁロザック、あいつさっき何をよこしたんだ?」

「今読んでいる。オーガナ文字で書かれているから翻訳しながらじゃないと・・・」

「通信機の翻訳機能もねぇのにできるのかよ?」

「お前じゃないから自分の頭脳でできる。」

カチン! 最後の言葉が気になったが否定できないのが渦殊の現実だった。

「んーと・・・!」

翻訳し終わったとき、そこに書かれていた内容は後のロザック達の行動を大きく左右するものになった。

 

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