第12話 待っているから・・・

信じていれば・・・

        いつかあなたは・・・・

                 私に会いにきてくれますよね・・・・・

ゴウンゴウンゴウンゴウン・・・・

ここはチャージャンの移動要塞の中・・・

どうやらようやっとリャージンとチュングルが泣きやんだようである。

「・・・・気は済んだ?」

すっかりあきれ返った様子でメサスが問う。

ぐず・・・ひっく・・・

まだ嗚咽を繰り返しながらリャージンが言った。

「ひどいのじゃ・・・わらわは喜んでおるのに・・・

わらわが、どれだけお前達を待っておったか・・・知らんであろう・・・」

「え・・・」

待ってた?

螢が不思議そうな顔をすると、それを察したチュングルがまた不思議そうな顔をして螢に問うた。

「覚えて・・・ないんですか?」

「覚えるも何も、私たちはあなた達を知らないわよ?」

「嘘だりゃ!!!」

メサスの言葉にチュングルよりはやく反応したのはリャージンだった。

「嘘だりゃ・・・あの時、あんなにも固く約束したのじゃ!

『絶対にまた会いに来る』って、約束してくれたりゃ!!

だからわらわもずっと待っておったのじゃ!!

信じて、待っておったのじゃ!!!」

泣きながらリャージンがわめく。

「あんた・・・」

あんたの気持ちはわからないでもないよ。

・・・でもさ・・・

「悪いけど、私たちはあんたと約束を交わした人たちとは別の人だよ。

あんたは人違いをしたんだ。」

「嘘じゃ嘘じゃ・・・あの時・・・レイは約束してくれたのじゃ・・・」

螢とリャージンの会話を見守っていたメサスが思い出したようにチュングルに言った。

「ねぇ、もしかして以前ここにトリオファイターが来たのは10年前だったりしない?」

「はい。そうです。」

「・・・・やっぱりあなた達は人違いをしてるのよ。

あの子は・・・『ケイ』。今年ザダーザムに召喚された子だもの。

多分今リャージンが言ってた『レイ』って子は・・・10年前に召喚されたトリオファイターよ。」

驚いたようにチュングルはメサスを見つめた後、もう一度螢に目をやる。

「言われてみれば・・・違いますね。あの人はレイじゃない・・・。

すみません。とんだご迷惑をおかけしました・・・」

メサスに軽く礼をするとリャージンをなだめに行った。

「リャージン様、その方はレイさんじゃないです。

その方は『ケイ』さんと言って今年ザダーザムに召喚された方らしいです。」

「え・・・?」

泣きじゃくっていたリャージンはふと螢の顔を見上げた。

「-----違うのじゃ・・・お前はレイじゃないのじゃ・・・」

すっ リャージンが螢から離れた。

「わかってくれた?」

「すまなかったのじゃ。」

リャージンががっかりしたように肩を落とす。

流石の螢も相手が子供なだけにその表情を見て放っておくわけにはいかないような気がした。

「・・・ごめんね。あんたの期待を裏切っちゃって。

でもさ、今でも多分その『レイ』って人は覚えてくれてると思うよ。その約束。

だってそんなに固く約束したんだろ?10年経っても忘れられないくらい。

信じて待ってたら、きっと会いに来てくれるよ。ね?」

「・・・名前は何じゃ?」

螢に背を向けているリャージンがその姿勢のまま螢に聞く。

「あたしかい?あたしは螢。渚 螢だよ。」

「・・・ケイ・・・お願いなのじゃ・・・」

「何?」

「・・・ラルーシアに着くまで・・・一緒にいてくれないかりゃ?」

「ラルーシア!?」

そう言えば、あたし達あの時ラルーシアに結局カックスを一人で行かせちゃったんだっけ!!

早く加勢しないと!!

「あたしらもラルーシアに行く途中だったんだ!一刻もはやくラルーシアに行ってくれ!!」

「行ってくれるんじゃな!?」

「あぁ行ってやるよ!」

「うわぁい!!!」

しまった・・・このパターンはまさか・・・

「リャージン様!喜んでいる場合ではありませんよ!

この水晶をごらんください!!」

チュングルが差し出した水晶にはAUX99が映っている。

「これは・・・」

そしてそれが向かっているのは・・・

「ラルーシアに向かっておるではないか!!

ぐぬぬ〜!!ザダーザムの奴に先は越させんのじゃあぁ〜〜〜!!!」

ざっ リャージンは窓際に立つと両手に巨大な扇を持ちながら、

それを頭上で合わせた。

「全速前進じゃぁ〜!!  破っ!!!!」

チャージャンの移動要塞はさっきの(多分)何倍もの速度でラルーシアに向かって前進していった・・・

 

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