第11話 君のために・・・
君はなぜここにいるの?・・・
なぜそんなに見つめるの・・・
見つめないで、僕が壊れてしまうから・・・
「メガル・・・!?」
間違いない・・・あたしは多分ザダーザムの中の誰よりも彼の声を知ってる。
鋭い刃のような、突き刺さってくる冷たい感じの雰囲気の中に、
どこか暖かみのある声・・・。
でもなぜ?なぜ彼がここにいるの!?
だって彼は敵------
『メガルって誰のコトだい?ヒューガ。』
「え・・・?」
ふと見ると、ハッチにはメーシャの他には072がふよふよ浮かんでいるだけだった。
072もあたしの方を不思議そうに見ている。
「(そ・・・そうよね、気のせいよね)ううん、何でもないの。
ただちょっと空気を吸いに来ただけだから・・・」
『そうかい。体は大丈夫?中央司令室で倒れていたみたいだけど。』
「うん。もう平気。」
『よかった----』
そう言うとメーシャはハッチに腰を下ろした。
『君も座ったら?ずっと立っているのもしんどいでしょ?』
「え・・・でもここ座って大丈夫なのιここ結構上空じゃ・・・」
『落ちさえしなければ大丈夫。さっ!』
「お・・・落ちさえって!?いやよ!私バランス感覚悪いもの!」
『大丈夫だって。いざとなったらコイツがいるし!』
そう言って072をポンと軽くたたいた。
「うー・・・わかったわ・・・」
仕方なくあたしも恐る恐るハッチに腰を下ろした。
思っていたほど怖くはなくて、どちらかというと気分転換にはちょうどいいくらいの風が吹いてくる。
『このOMZの周りはね、実は薄いシールドが張ってあるんだよ。だから強い風はここまで入ってこないんだ。』
「そうなんだ・・・」
しばらく沈黙が続いた。
私はずっと遠くの空を見てた。遥か彼方に小さくツルに覆われたラルーシア城が見える。
----あたしはあそこでメガルと会って・・・そしてこのメーシャとも会った------
そう言えば072はメーシャのこと「マスター」って呼んでたっけ・・・
ふと隣に座っているメーシャの顔を見上げてみると、
メーシャも何か遠くの空を見つめてるみたい。
目線の先には多分ラルーシア城があると思う。
まさかあたしと同じこと思ってるのかな・・・
そして・・・あたしは気づかなかったけど・・・
いつの間にかまた072は姿を消していた・・・
一方こちら中央司令室。
カックスが大画面を前のコンピュータを動かしながら何やら作業をしている。
ピポパピポパプポ・・・・
「・・・だめですね。4人とも連絡が取れない。
・・・みんなが無事でいることを願うほか無さそうですね・・・。」
ピッ 画面を切り替えると今度はラルーシア城の画面を映した。
そしてまた何やら作業を始める。
「問題はこっちか・・・
ボスモンスターは倒したがまだ問題が残っていそうな気がする・・・
なぜあのツルは消えないんだ・・・まさかあそこは本当に
ただのモンスターの住み処なのか?」
ビビッ ビッ ビービビビッ
「!?」
突如画面がぶれだし、しばらく画面が混乱状態になっていたが、
やがて画面が落ち着きだすと、何やら人のようなものが画面に映っている。
『ヨォ・・・オコマリノヨウダナ・・・』
「だっ 誰だお前は!?」
突然の事に驚いたカックスは立ち上がり、画面に向かって怒鳴る。
『マァオチツケッテ。セッカクイイジョウホウヲヤロウトオモッタノニヨ。』
「!?(いい情報?こいつは一体何者なんだ?
それにこいつ通信機もないのにどうやって僕と話しているんだ!?)」
浮かんでくる疑問点は後を絶たない。
しかも画面に映っているはずのこの人物の姿は画面がぶれ続けているため
シルエットでしかわからないのだ。
----相手が誰か、正体がわかれば----
『マッタクセワノヤッケルコマンダーダナ。
マ・イマノオマエニシテミレバ、シッテソンハナイジョウホウダトオモウゼ。
ドウダ?ココハヒトツオレヲシンジテミナイカ?』
「・・・・・・」
・・・・賭けて・・・みるか・・・
情報を得る手段が断たれた今、全く情報が入らないよりは
そちらの方がいいのかもしれない・・・
「-----いいだろう。ただしもしそれが真実でなかった場合は
どうなるか覚悟しておけよ!」
『ククク・・・オレッテシンヨウネェナァ。オレノショウタイモワカラナイクセニ。
フッ マァイイ。タダシジョウホウヲヤルカワリニジョウケンガヒトツ。イイカ、キケ。
イマイチド「ラルーシア」ニコイ。タダシオマエヒトリデダ!』
「だめだな!わざわざ僕がラルーシアに行かなくとも、お前が今ここで情報をくれたら
済むことだろう。」
『ソリャイケネェナァ。ヨノナカ「ギブアンドテイク」ダゼ?ジョウシキダロ!
イイカ、ヒトリデクルンダゾ。ソレイジョウデコヨウモンナラ
ジョウホウハヤラネェカラナ。』
「・・・!(クッ・・・やつの言い分にも・・・一理あるか・・・)
----わかった。これからラルーシアに行く。お前もそこで待っていろ。」
『ククク・・・マッテルゼ、「コマンダー」』
ブツッ ツーーーーー
画面が消えた司令室の中でカックスは考えていた。
----あいつは一体・・・僕は本当に行くべきなのだろうか・・・
--『マ・イマノオマエニシテミレバ、シッテソンハナイジョウホウダトオモウゼ。』--
・・・ここにはメーシャが残っている。日向は彼に任せれば大丈夫だろう。
そう自分に言い聞かせ、カックスは司令室を後にした。
ハッチ。
ピー ピー ピー
『ん?通信機が・・・カックスからだ。ちょっと待ってね。』
「うん。」
座って話していたメーシャと日向だったがメーシャの通信機が反応したので
いったん会話を中断した。
『はい何でしょうコマンダー。』
「メーシャ、これからちょっとOMZを空けますよ。
万が一の場合のOMZの指揮は君に任せますから。」
『了解。』
「それと・・・・」
『?何ですか、コマンダー。』
「・・・・・・日向をよろしく頼みます。」
『・・・わかったよ。まかせておいて。』
「それを聞いて安心しました。じゃ、行ってきますんでちょっとどいててくださいね。」
『はい・・・って、へっ!?今なんて!?』
確認する間もなくハッチの奥の方からAUXの発進音が・・・
『ヒューガ!あのっ そのっ だからさっ!!!』
「え?あ・メーシャ、終わったの?」
『ちょっ!来るっ!来るから!!!』
「?????来るって?え?何が?」
『だからどいてぇ〜〜〜!!』
ゴォォォォォォ・・・・・!
間一髪メーシャが日向を抱えてよけたため、直撃は免れたι
そしてAUX99はOMZを去っていく・・・
『コマンダー!
少しはまわりも気にして行動してくれ!!』