未来視達の出会いと別れ
〜未来・選択〜

 

ボコッ・・・ボコッ・・・
僕のまわりで次々と泡が浮かんでくる。
ここはどこなんだろう?水の中だと思うけど全然苦しくない。
「ここは夢の中だよ。申公豹。」
見るとそこにはいつになく真面目な表情をした太上老君がいた。
「夢・・・?」
「申公豹・・・私も本当はこんなにもはやく君に見せたくなかったんだけど・・・」
「???」
太上老君の言っている事がさっぱりわからない。
「君に見せてあげるよ。未来を。」
「!?!?!?」
未来!?―ってことは世の中が変わっているのかな?
みんな幸せに・・・

・・・・10000年後の未来まで見せられたけど、
何も変わってはいなかった。 虐げられる人、意味のない争いをする人、意味もなく無駄死にする人、時代に置いて行かれる人、そして自滅する地球・・・
これが未来?
では僕は何を目指していたの?
世の中を変える、その為に今僕はここにいる。
これが未来なら僕は何もしていないのと同じじゃないか・・・?
「―こうして最後にはなにもなくなるんだ。それでも君はあがくかい?」
・・・わからなくなってきた。
僕が何をしたって結局未来は変わらない。何をしたって同じ。
じゃあ始めから何もしなければいいじゃないか。
普通に暮らして、普通に死んで、それで終わり。
それでも未来は変わらないんだから。
過去に縛られて生きて行くより、そっちの方がどれだけ楽か・・・
「ここを出て人間として生きるか、あがくために道士として生きるか、今ここで決めるがいい。」
いつの間にいたのか、見た事のない人が太上老君の隣にいる。(王奕)
「何事にも流れが存在する。流れに身を委ねよ。さすれば勝ちは無く負けもまた無い―――さあどうする・・・『申公豹』?」
ビクン!
申公豹・・・じゃあこの名前の意味は?
誰にも負けない、最強の道士:申公豹。
世の中を変える為に、どんな圧力にも負けない為にこの道を選んだんだ。
自分自身で選んだんだ。
そうだ!未来がなんだ!
その『未来』さえ打ち砕く『最強の道士』になればいいじゃないか!
決められた未来なんてない!そのために僕はここにいるんだから!
「僕はあがくよ!未来なんてくそくらえだ!
未来なんて、実際にその時にならなきゃわからないものなんだよ!
先がわかっている未来なんてつまらないよ!
よくわからないけど、未来なんて生きていればいくらでも変える事ができるんだ!!」
悩んだ末に僕が出した答えはこうだ・・・『道士としてあがく』
太上老君はほんの少しだけ優しく笑った。 もう一人の人は無表情だけど。
僕の意識はそこで切れた・・・

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