未来視達の出会いと別れ
〜外界を臨む〜

 

「う〜ん・・・」
僕は彪、改め申公豹。
今はここ桃源郷で太上老君の弟子として修行しているんだ。 あれからここの生活に必要な事も修行のメニューも教わって「一応」不自由な事はない・・・はずだけど・・・
「だぁーー!もーヤダ!」
そう!修行のメニューはただ「瞑想」だけなんだ!しかも瞑想について何も教えてくれなかった。
あれから結構経つのにメニューに変化もない。
ついに耐え切れなくなった僕は瞑想をやめてちょっと散歩に出た。
太上老君に見つからないかって?
大丈夫だよ。あの人はあれからずっと寝てるから。

なんだかんだで僕は桃源郷と外界の境まで来た。本当はこんな遠くまで来るつもりはなかったんだけどね。
「前まで僕は・・・この中にいたんだな・・・」
耳をすませば聞こえてくる。目を見開けば見えてくる。
人を殺す炎。逃げ惑う人。泣き叫ぶ人。死んでいった友達。守れなかった人達・・・あの日と同じことがいつまでも・・・
嫌だ、思い出したくない。思い出せば出すほど、今の僕が、「申公豹」が消えてしまいそうで―――!
「いや・・・だ・・・・いやだーーー!!」
ドドオン!
僕が叫ぶのと同時に今僕が立っている桃源郷と外界の境界に亀裂が入った。
そして猛烈な地震が起こって僕は倒れた。
するとみるみる桃源郷が上がっていくじゃないか。
「あ・・・待って!」
がしっ 
間一髪桃源郷の端に捕まったけど落ちるのは時間の問題だ。
現に手はずるずる滑っていく。
「・・・すけて・・・誰か助けて!」
「世の中を変えるんじゃなかったの?最強の道士になるんじゃないの?」
見えないけどきっと僕の後ろに太上老君の立体映像がいるんだろう。
「・・・なるよ。なるさ!でもこのままじゃ・・・!自分ではどうにもできないけど、まだ死にたくないよ!」
「誰だってそう思うよ。――手が焼けるなあ・・・クロちゃん!」
「はぁい。」
すると桃源郷から飛んできた「クロちゃん」が僕を乗せて桃源郷まで戻してくれた。

しばらくすると、地震はおさまって桃源郷は動かなくなった。
「く・・・雲の上!?」
そう。つまりこの地震で今の桃源郷の形になったわけ。外界と完全に遮断された、この地形に。
「クロちゃん、席を外して。」
「えーっもう!?・・・わかったよ。」
すごすごと帰って行く「クロちゃん」を見送った後、太上老君は言った。
「申公豹・・・ちょっと眠って。」
「?」
「立体映像で話すの結構めんどくさいんだよ?せめて夢の中で話そうよ。」
あくびをしながら太上老君(の立体映像)は言う。説得力ないけど・・・ι
「でも寝ろって言っても・・・!?」
誰かに後頭部を殴られて、僕は気を失った。
「ありがと、王奕。」
「この者は5000年後の計画に必要な者。言うなら早めに説明しておくといい。」
この後、太上老君が僕に言った事は・・・とても衝撃的な事だった。

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