未来視達の出会いと別れ 〜最強宝貝・雷公鞭〜 |
「・・・じゃ使ってみて。」
「はぁ?」
いきなり太上老君はそんな事を言い出した。
渡されたばかりの、しかも最強のスーパー宝貝をだよ?
「使ってみてと言われても・・・うっ!?」
何が起こったの!?申公豹は突然雷公鞭を持ったまま倒れた。
「力が・・・吸われ・・・る・・・!」
とてもつらそうな顔をして申公豹は言う。
「イメトレ(イメージトレーニング)やったんじゃないの?」
「夢の中と力を吸われる度合いが全然違うんですよ!!」
スーパー宝貝は持ち主以外が使うと1分と持たないうちに力を吸われるのは知っていた
けど、最強の宝貝ともなるとこうまでひどく吸われるのか・・・
「まぁ雷公鞭は一応私の持ち物だからね・・・」
「ぐ・・・!何とか・・・してください・・・よ・・・!」
老子も老子だよ。今まで宝貝を使った事もない道士にいきなり最強のスーパー宝貝を渡すなんて。
あれじゃ申公豹、五分でアウトだよ。
「・・・じゃ頑張ってねーおやすみー・・・ぐー・・・」
えーっ!何にもしてくれないの!?
まぁ老子の事だから期待はしてなかったけど・・・。
「・・・・」
申公豹は立たない。いや、立てないんだ。
でもこれに耐えてこそ、最強の道士へ一歩踏み出した事になるんだろうな。
「・・・くっ・・・!」
私はこの程度なのか・・・!
今まで宝貝にすら触れたことのない私は所詮、スーパー宝貝を使えるほどの器ではないのか?
最強の宝貝、雷公鞭。太上老君は今の私に一番合う宝貝だと言った。
今の私・・・?それはどういう事なのか?
『お前は何が為に戦う?何が為に私を使う?』
「?」
今の声は・・・まさか雷公鞭!?雷公鞭が私に問いかけているのか、
私が本当に雷公鞭を使うにふさわしい器なのかどうかを。
「昔は『世の中を変える為』、ただその為だけに修行をしていました・・・。
今は違う。戦わなくてもいいのです。
自分がその渦の中にいると全体像が見えなくなってしまいますからね。
私は常に世の中の全体像を眺める「傍観者」になる事に決めたのですよ。
まぁ、「あれ」を倒すまでは、少々世の中にちょっかいを出す事もあることでしょうけどね。
それが1000年前に出した、自分の課題の答えです。」
『お前は戦わないのか。私は最強の宝貝なのだぞ?』
私は自信げに笑ってやった。
「戦わないと言っても、逃げるわけではありませんよ。
ありのままを真っ直ぐに受け止めるつもりです。
『最強の宝貝』は、必ずしも戦いによって証明されるものではないと思うのですがね。
・・・まぁ、あなたにその気がないのなら、私はあなたを太上老君に返しますよ?」
『・・・お前は「あれ」を倒す気でいるのか・・・』
雷公鞭も「あれ」に気付いた様だった。
「もちろんです。「あれ」のしていることは私の美学に反しますからね。」
『―――わかった。お前の力になろう。ただ一つ気になることがある。』
「何でしょう?」
『・・・よく出てくる「お前の美学」とは何なのだ?』
「いくら最強の宝貝でもそこまで教える義理はありませんよ。」
雷公鞭は苦笑いをした。いや、正確にはそう見えた。
それが幻であったのか、現実だったのか、今でもよくわからない。
ただ、雷公鞭は私のものになる事を了解してくれたようだ。
それで、よかったのだと思う。