未来視達の出会いと別れ
〜そして少年は〜

 

「申公豹・・・」
申公豹はボクの背中でぐったりしてる。さっきのがよっぽど堪えたんだろうな。
「あの香りはね、七つのスーパー宝貝の一つ・傾世元禳という羽衣から出ていたんだよ。
人の精神をその香りで支配して、自分の思い通りに操るんだ。
でも申公豹は今の段階でそのスーパー宝貝に耐えぬいたんだ。すごい事だよ。」
「・・・・・」
やっぱダメだった。申公豹を慰めるつもりで言ったんだけど・・・。
さっきの羌族の皆を見殺しにしてしまったのが一番堪えてるみたい。
「スーパー・・・宝貝・・・」
「え?」
申公豹が何か呟いたようだったけれどよく聞こえなかった。
「あの人は確かに強かった。僕が足元にも及ばないくらいだった。
でもあの人のしている事は間違っている。これからもきっと是正する事はないだろう。 ・・・・」
「妲己が気になるの?」
ひょっとしたら申公豹は妲己へのリベンジを図っているのかもしれない。
怒りに身を任せて・・・
「黒点虎、君に話があるんだ。ちょっとそこの草原で降りてくれないかな。」
申公豹は桃源郷のとある一角を指した。ボクはそこで降りることにした。
「話って何なのさ?」
「・・・・ふぅ・・・」
申公豹は僕を背もたれにして座っている。
でもなぜか今のボクはそれをいやとは感じない。
この桃源郷を出発する前と違って、何だか申公豹がとても大きな人に見えるから。
ほんの短時間だったけど、とっても成長したような気がしたから。
「太上老君は以前、僕にこう教えた事があるんだ。―窮地に陥ったら我に返れ、
激情を洗い流し、心を無にすれば、開ける道があるって・・・」
「うん・・・それで?」
「ここに来る途中で考えたんだ。今僕が本当にすべき事を。 妲己に勝つ事なのか、羌族達を守ればよかったのか、太上老君の弟子になるべきだったのか ・・・って、いろいろ考えたんだ。」
「それで・・・答えは見つかったの?」
すると申公豹はちょっとだけ笑いながら首を振った。
「この答えを出すにはそれなりの時間がかかると思うんだ。答えが出るまで、桃源郷(ここ)で おとなしく瞑想しておくよ。」
そこで僕達は別れた。

申公豹はそれから1000年くらいおとなしくしていた。
そんなある日、申公豹は老子に呼び出された。
「太上老君、話とは?」
今日はめずらしく老子本人が起きている。立体映像じゃなくて。
「申公豹・・・以前君が地上へ降りたとき、一つのスーパー宝貝を目撃したみたいだね。」
どうやら太上老君はあの日の事を知ってるみたい・・・思いっきり寝ていたはずなのに。
「ええ。傾世元禳とかいう羽衣の宝貝でした。」
「そう。」
しばらく沈黙が続いた。先に口を開いたのは申公豹だ。
「太上老君・・・少し前に私はこんな夢を見ました。
夢の中で誰かから何かの宝貝をもらい、それを徐々に使いこなしていく夢を・・・」
すると、老子はなにやら懐からゴソゴソと探し出してあるブツを差し出した。
「その宝貝ってもしかして・・・こんな形をしていなかったかい?」
申公豹はこれ以上ないってくらい目を丸くした。
「そうです!!私が見たのは確かにこれでした・・・太上老君・・・
あなたはまさか知らず知らずのうちに私にイメージトレーニングをさせて
そして本物を渡すつもりだったのですか・・・」
「・・・そうかもね。」
申公豹・・・何でそんなことがわかるの?
そして、太上老君はその宝貝を一振り大きく振りかぶってから言った。
「この宝貝は最強のスーパー宝貝:雷公鞭。雷を操る宝貝だよ。
その破壊力はもちろん仙界1位だよ。おそらく今の君にはこれが一番合うだろう。」
「これが・・・最強宝貝・・・雷公鞭・・・」

 

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