君となら行ける 〜天化との出会い〜 |
「元始天尊様っ!!大変だっ!!」
玉虚宮謁見の間に飛び込んできたのは
お馴染み天化の師・清虚道徳真君だ。
「おぉ道徳か。久しいのう。お前の所の天化はどうしておるかの?」
「その天化なんですっ!私が筋トレから帰ってきたら、いなくなってたんです!!」
「何?天化が行方不明とな?」
「申し訳ございませんっ!しかし天化はまだ仙人界に来て日が浅く、
私の洞府の他には行った事がないんですっ!
何かいざこざが起こる前に天化を見つけ出したいんですっ!!」
「確かにそうだのう・・・どれ、ヒマを持て余しておるわしの弟子に任せるか。
白鶴!」
「ハイ。例のお二人ですね。かしこまりました。」
でも大丈夫なのかな〜あの二人で・・・
白鶴はそう思ったが口には出さなかった。
バサバサッ 白鶴は「二人」を探しに飛び立った・・・
ちなみに今は季節で言えば梅雨。
空は今にも雨が振り出しそうだった・・・
「それにしてもわしも宝貝欲しいのう〜!」
「望ちゃん・・・それじゃ修行サボっちゃダメじゃない。」
「どーせあのじじぃはわしがいくらがんばろうと宝貝などくれぬわ!」
ピキーン!太公望の頭に一つの案が浮かんだ。
「・・・望ちゃん?」
太公望のまわりに何やら怪しげなオーラが取り巻いているのを
普賢はいち早く察知した。
「かくなる上はぁぁ!!!」
「望ちゃん!?!?やめなよ!!」
「えぇいうるさい!おぬしのその宝貝をよこせぇ!!」
どうせもらえないなら奪うまで・・・
それが太公望の答えであったι
無論さすがの普賢もこれに抵抗する。
「だーめーだーよーはーなーしーなーよー!」
「よぉこぉせぇ〜〜〜」
「誰さ!!」
しぃーん・・・
今まで聞いた事のない声だ。
・・・子供?
二人で息を潜めて声がしてきた方の草むらを覗いてみると・・・?
「誰さあーた達!!」
そこにいたのは鼻に大きな一文字の傷を負っている・・・
そう!幼き日の天化だ!
が、二人は天化を知るはずもなく・・・
「おぬしこそ誰だ?どこの洞府から迷い込んできたのだ?」
「うるせぇ!ヒトのモン盗るような奴にはロクな者がいねぇって親父が言ってたさ!
これでもくらうさ!!疾っ!!」
「!?」
何と!この子供はこの幼さで宝貝を持っているではないか!!
太公望は己の立場がより危なく(?)なったのも忘れて
「あれは宝貝か!?」
普賢に聞く。
「うん。でもあの宝貝・・・どこかで見たなぁ・・・
誰かの宝貝に似てるんだけど・・・」
「話は後だ!宝貝が相手なのだから宝貝を持っておるおぬしが相手をせい!」
「待って。まずは話し合おうよ。ね?ボク。」
「俺っちは『ボク』じゃねぇ!殷の鎮国武成王は黄飛虎の次男・黄天化さ!!」
「ムゥ・・・」
この子供、それなりのプライドを持っておるようだのう。
天化・・・か・・・
「俺っちの莫邪の宝剣!受けてみるさ!!」
「・・・しょうがないなぁ・・・『引力制御』!!」
ヴン!天化の攻撃は全て普賢と太公望の脇を反れて行った。
「うわあああ!」
勢い余って天化がぬかるみに突っ込んだ。
「・・・何をしたのだ普賢?」
「斥力を発生させたんだ。もう天化君の攻撃は僕らには届かないよ。」
「くそ・・・!」
ポツ・・・ポツ・・・
ザァァ・・・・・・
いよいよ雨が降ってきた。
玉虚宮の誰もいない謁見の間で、
一人天化の帰りを待つ道徳の姿があった。
「遅いっ!こうなったらオレが天化を探しに行くっ!」
しびれを切らした道徳が、
愛弟子天化を探す為に
一人土砂降りの雨の中に突っ込んで行った・・・
その後ろ姿は・・・
仙界大戦で聞仲の禁鞭の中に飛び込んで行った姿と同じで・・・
大きくて頼もしく、勇ましかった―――
封神計画発動まで・・・・
あと15年・・・