君となら行ける
〜太極符印〜

 

「白鶴よ!」
「はい何でしょう元始天尊様。」
「太公望は修行をしておるな!」
「はい。あれからめっきり外へは出ておりません。
何があったのかは知りませんが・・・」
「――――普賢を呼んでくるのじゃ!」
「普賢師叔を?何故にございますか?」
「よいから早く呼んで来るのじゃ!」
「かしこまりました。普賢師叔ですね。」
バサバサッ

普賢と太公望が最後に密談をしてから数十年の年月が経った。
色々な事があった。
雷震子がスカウトされたり、李靖が仙人界を出たり、
太乙が人間界へ行ったり・・・

「元始天尊様、只今戻りました。」
「元始天尊様が弟子・普賢、参上致しました。」
「うむ。御苦労であった。」
「用件は何でしょう?」
「普賢よ、わしの他の11人の弟子達には顔を見せたことがあるかの?」
「他の11人・・・崑崙十一仙のことですか?」
なぜ十二仙でなく十一仙なのか・・・
本編を読んだ事のある方ならわかるはず。
言ってしまえば燃燈が抜けてしまったからだ。
「そうじゃ。そして太公望とおぬしの修行の目的も、忘れてはおるまいな?」
「もちろんですよ。僕と望ちゃんはただの仙人になるでけじゃなく、
師表たる崑崙十一仙になるために修行してるんですよね。
しかも空席は後一つしかないから、僕か望ちゃんのどちらかがなるんですよね。
あ、僕らが入ったら十二仙か!」
「改めて聞くが、おぬしは本当に『仙人』になりたいか?」
・・・・・つまりこうだ。
本当に仙人になる覚悟はできているか?
望ちゃんとの約束だもの。
『どっちがさきにせんにんになれるか、きょうそうしようよ!』
『ああ、おたがいにえんりょはいらないぞ。はやいものがちだ!』
仙人のデメリットだって知っている。
自分のための時間はほとんど割けない。わかってて、競争をはじめたんだから!
「はい。もちろんですよ!」
「よろしい。それを聞いて安心したぞ。」
「恐れ入ります。」
自信に満ち溢れた笑顔で普賢は答えた。
「――白鶴!白鶴!!例のブツを!!」
「はい。」
「これは・・・!!!」
目の前に出されたのはバスケットゴールよりは少し小さいくらいの
真っ黒な球体。少し透けているみたいだ。
表面から中身までグラフやら座標やらがびっしりつまっている。
―――どれも雲中子様の所でならった数式ばかりだ・・・!
「普賢よ。おぬしに
宝貝人工頭脳(パオペエコンピュータ)・太極符印を授けよう!!」
え?
「元始天尊様・・・今なんと・・・?」
「おぬしに、宝貝を授けようと言っておるのじゃ!」
「!!!!!」
宝貝をもらう・・・!仙人になるための大きなステップだ!
望ちゃんが見たら何て言うかなーー・・・
「――賢、普賢。普賢!これ普賢!!話を聞かぬか!!」
「あ、はい。すみません。」
「この宝貝について説明する。これは全ての物質の元となる元素を操れる
宝貝なのじゃ。」
「元素!?じゃあ、僕の得意分野だ。雲中子様にさんざん物理学を教えてもらったから。」
「ならば話は早い。使うときはこうやって・・・それでこうして・・・」
五分後。
「以上じゃ。引き続き修行に励むのじゃぞ!」
「ありがとうございます!」
ちなみに、この説明の時には
元始天尊は「自爆」の機能があることは黙っていた。
その機能自体も封印してあったのである。

「ぼーおちゃん!」
「わわわわわ!!」
細長い石の上で瞑想(でも寝てたんじゃないのかなぁ・・・)していた
望ちゃんに、僕は背中から声をかけた。
もう少しタイミングが悪かったら望ちゃん下に落ちてたよ。
「何なのだ普賢!危ないではないか!!・・・さては
もしや薬が完成したのか!?」
「うーん、薬ではないんだけど・・・見て!望ちゃん!」
ヴン!
僕はさっき貰った例の宝貝を出現させた。
「あー!!おぬし!!抜け駆けとは卑怯だぞ!!」
「いいでしょ♪元始天尊様にもらったんだ。
原子を操る宝貝人工頭脳・太極符印だって。」
「うらやましいのう〜」
「望ちゃんだって頑張ればそのうち貰えるよ。」
「そういうことではない!同期なのになぜおぬしだけ宝貝をもらえるのだ?」
「努力じゃないの?」
カーン・・・・という効果音が鳴りそうなぐらい普賢は即答した。
・・・普賢・・・おぬし宝貝をもらってキャラ変わってはおらぬか・・・?
「わかったよ・・・わしもがんばる。おぬしも宝貝を使いこなせる様に頑張れ。」
「ありがとう。でも、勝負は仙人になるまで終わらないからね。」
「言われずとも!」
パンッ
お互いの右手を打って、そして笑った。

封神計画発動まで・・・・
                              あと、40年・・・・・

 

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