| 愛する君の為に 〜女の事情 一〜 |
「う……」
高蘭英が目を覚ましたのは暗い湿った洞穴だった。
「ここは…」
「目が覚めたか高蘭英。」
「!!!あなたは!」
不意にかかった声の主に気付いた時、思わず驚嘆の声をあげた。
「金光聖母!!!なぜ神界にいるはずのあなたがここにいるの!?」
「お前こそ今は『妖怪統領』たる張奎の妻なのであろう?なぜこんな所にいる。」
「あたしらもいるだわさ。」
「バフーーー!!」
見るとお決まりの雲霄三姉妹が…。
「大丈夫よマドンナ。きっと太公望様が助けに来てくださるわ!!」
やはりこの三姉妹の言葉には手も足も出ない。
気が付くと洞穴の隅の方に碧雲・赤雲の姉妹弟子がいた。
しかしその二人も会話には入ってこれなかった。
しばらくあきれかえって誰も声が出なかったが、先に口を開いたのは高蘭英。
「みんな何故ここに来たの?」
「私達は公主様の焚かれる香のために庭園で草を摘んでいたら、
誰かに突然首筋を叩かれて気を失って…気が付いたらここに。」
碧雲・赤雲である。
「あたし達は、ビーナスが急に「太公望がいる!!」とか言って
変な方向に走り出したからそれを追いかけてたらここまで来ちゃったってワケよ。
わき目も振らずに追いかけてきたから途中の事は知らないだわさ。」
「……………」
再び沈黙が始まる。
―――ああ、ここの三姉妹はどうしていつもこうなんだ…
「わ…私は主人のために朝食を作ってたら突然見知らぬ奴が来て、
必死で抵抗したんだけど、最後にすごい一撃をくらって、それで気を失ってここまで来たの。」
高蘭英である。「主人の為に朝食を作る」という言葉に雲霄が反応した。
「なっ何よ!!私には朝食を作ってあげられる方もいないのよ!?
まさか太公望様を失った私に対するあてつけ!?」
「違うわ。そんなつもりは無いの。」
嬋玉ならここで土行孫の事を鼻にかけてたかだかと自慢している所である。