| 愛する君の為に 〜走れ!烏煙!!〜 |
「蘭英、実はちょっとした騒動があってお前の協力が必要なんだ。
今から一緒に玉殿宮に………!!!」
今朝出ていったときとは全く違う光景が広がっていた。
蘭英が作っていたのであろう。机の上の朝食の準備はほとんどが床に落ちていた。
椅子が倒れたり、花瓶が落ちていたり…
まさか……遅かったのか……!?
「蘭英……蘭英―――――!!!!」
事情を察したのか、入り口で待っていた烏煙が入ってきた。
「あんさん!悲しんでるヒマは無いで!大急ぎで玉殿宮の楊ゼンさんに知らせな!んでからあねさんも探さなあねさんの身が危ないで!!」
「言われずともわかっている!…だが今は玉殿宮より蘭英の方が先だ!なにかあってからでは遅い!行くぞ烏煙、全速力だ!!」
「飛ばすでェー!!!」
ズドドドドドドドドド……
烏煙は全速力で走り出した。
この辺りの後先考えない張奎の慌て様は、
異母姉様が危機に陥った時の燃燈を想像してくれるとわかりやすいだろう。
「あら?ねえハニー、今何か通って行かなかった?」
玉殿宮の窓から張奎の到着を待っていた嬋玉が言った。
「知るかよ!気のせいじゃねぇのか?」
「いや…気のせいではない。私にも見えた。
―――あれは恐らく張奎とその霊獣:烏煙だろう。」
燃燈よ…お前は素晴らしい視力の持ち主だ。
「仙界であれほど速く走れるのは烏煙の他には武吉くんくらいしかいませんしね。
でも張奎くんがあそこまで急いでいる理由は…」
「十中八九、高蘭英だな。やつは高蘭英を連れて戻ってくるはずだった。
だが今烏煙の背中には張奎しか乗っていなかった…」
「―――とすると、彼女ほどの仙女がすでに誘拐されてしまったというのですか!?」
「何はともあれ、後を追うしかないな。見失わないうちに追うぞ!」
「そうですね。行こう哮天犬!」
スピードを出して玉殿宮から出て行った楊ゼンと燃燈に一足遅れて
「オイラ達も後を追うぜ!ポルシェ!」
「ハニー!私はどこまでもハニーに付いて行くからね!!」
「うっ…」
実は犯人の所に捕われている大勢の仙女が目的だった土行孫だった。
「了解ッス!!」
そして二人を乗せた四不象は先発した二人を追った。
いつからか知らないが、四不象は一個人の乗物ではなく「玉殿宮の」乗物になったらしい。