愛する君の為に
〜張奎の想い〜

「まだそんな大事件には発展していないからね…。実は、仙女が相次いで誘拐されるという怪事件なんだ。犯人はまだ捕まっていない。
今パトロール部隊に頼んで探してもらってるんだけど、現行犯じゃないと捕まえる事が出来ないんだ。………そこでだ。」
次の瞬間、楊ゼンの口から出た言葉はとんだ大問題を呼ぶ事になる。
「だれか、おとりの仙女が必要なんだ。不意に襲われてもある程度対抗できるくらいの強い仙女が。だから、幸いにもあなた達三人の側にはそれくらいの仙女がいる。
―――だれか協力してくれないかな?」
「(異母姉様!!!)」
「(…蘭英…)」
二人は言葉も出なかった。どちらも大切でかけがえの無い人だ。
危ない目には会わせたくない。
「嬋玉が…か…オイラは構わねぇけどアイツはどう言うかな…」
ピーン…待てよ!
「なぁ楊ゼン!それなら直接本人に聞けばいいじゃないか!オイラ達がどーこー言うよりそっちの方が確実だぜ!?」
「なるほど!君もたまにはいい事を言うじゃないか!」
「おいおい…」
事態は丸く収まったように見えたが、
「待て楊ゼン!ただでさえ異母姉様は病弱の身であるのだぞ!その異母姉様に危険なおとり役を買って出ろと言うのか!?」
なるほど、考えてみればそうである。
「これはこれは…大変失礼致しました。
…とすると残る候補は嬋玉くんと高蘭英…のどちらかだね。」
「やっぱ本人に聞くっきゃないだろ?」
「そうですね。張奎君に異議さえなければ…」
「……(僕だって、僕だって蘭英を危険な目に会わせたくない…でも…)」
ふと、張奎は楊ゼンに聞いてみた。
「おい楊ゼン、その犯人像はどんなやつなんだ?」
「それが…全くわからないんだ。捕まった仙女も解放されていないし、目撃者もいないからね…」
「……(蘭英……)わかった。いいだろう。」
どうせ大した奴ではないだろう。別に構わないか。
そう自分に言い聞かせながら張奎は高蘭英を連れてくる為、一時円天洞に帰ることに。
でも何だろう?何だかとてもいやな予感がする…
案の定、予感は敵中した。

 

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