愛する君の為に 〜いつまでも、あなたと共に〜 |
蘭英は封神台での出来事を覚えている。
『聞仲様………聞仲さま―――――!!!』
ひっく…う…えっ…えっ…
―――あなた……―――
なんとも複雑な思いでその光景を眺めていた。
―――聞仲様は確かに私も尊敬していたわ。私が従うのは夫・張奎と聞仲様以外にはいないと…例え聞仲様が亡くなられてもそれは変わらないと…
でも……あなたは…あなたの中の聞仲様は大きすぎる……聞仲様の影ばかりを追いかけて、それで終わってしまいそうな気がする……
そんなあなたは見たくないの……あなたにそんな男であって欲しくないの……―――
そして聞仲様はあなたに言った。『自分の為に戦え』と…
そして蓬莱島の戦い。あなたは気高き宝貝・禁鞭をついに使いこなした。
聞仲様の形見としてではなく、自分の宝貝として。
あの時あなたはやっと自立した気がしたの。
そして、改めて思ったの。私は一生あなたと共に生きてゆきたいと…
聞仲様の影を負うばかりのあなたではなくて、自分の道を進むあなたと共に…
ふと、そんな事に思いを馳せていた。
「さてと、あの人が帰って来る前に朝食作っておかなくちゃね。」
一方こちら蓬莱島は玉殿宮。
いわゆる、もとの崑崙山の玉虚宮みたいなところである。
教主・楊ゼンが住まう所だ。
だが今日はいつになく会議室に緊張した空気が流れている。
普通の会議は終わったあとで、今は会議室には教主楊ゼンと妖怪統領・張奎、そして人間統領・燃燈道人となぜか嬋玉の夫(?)・土行孫が残っている。
「楊ゼン、話とは?」
燃燈が尋ねる。
「うん実は…三人とも、最近妙な事件が続発しているのは知っているかい?」
「妙な事件?」
張奎は知らない。燃燈も知らなさそうに首をかしげる。土行孫はもちろんだ。