愛する君の為に
〜二人は今〜

「あなた…あなた!」
「うん……一に人間と粗相を起こす事無き事…二に平和を尊ぶこと…三に…」
ここは仙人界・蓬莱島の中にある妖怪統領・張奎の住まう円天(エンテン)洞の寝室。
もちろん彼の寝室である。
「いつまで寝ぼけているの?もう朝よ!
玉殿(ギョクテン)宮で会議が始まってしまうわよ!あなた!!」
「う〜……う〜ん……」
彼はよほど朝に弱いと見える。
そしてついに「彼女」の奥の手が炸裂した!
「宝貝・太陽針!!!」
「ぎゃあああああ!!!」
ようやっと張奎は起きた。しばらくショックのあまり脳が回転するのに時間がかかったが、ようやく我を取り戻すと思い出した様に彼女に聞いた。
「ら…蘭英!さっき何て言った!?」
「だから、玉殿宮で、会議が始まってしまうと言ったのよ!」
わかりやすい様に少しずつ区切って言った。
「うわああぁ!どうしてもっと早く起こしてくれなかったんだ!」
「起こしてもあなたと来たらいつまでもうなってばかりで起きないんですもの。」
「早くしないと!あ〜朝御飯は抜きだな。」
慌てふためく張奎に蘭英はやっと微笑みながら言う。
「大丈夫よ。会議が終わって帰ってくるまでに作っておいてあげるわ。」
「ありがとう蘭英。さぁ急がなくちゃ!烏煙!!」
「クエエエエ!」
呼ぶと即座に烏煙が来た。ひょっとすると烏煙は耳もいいのかもしれない。
支度を整えると張奎は急いで烏煙に乗る。
「それじゃ行って来るよ蘭英!」
「行ってらっしゃい。あなた。」
ズドドドドドドドド……言葉が終わるか終わらないかのうちに張奎と烏煙は去って行った。
―――まったく…いつまでもああなんだから…―――
小さな後ろ姿を見送りながら蘭英は思った。

 

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