愛する君の為に
〜女の事情 二〜

「ところで金光聖母はなぜここにいるの?
あなたは先の仙界大戦の折、ナタクに封神されて今は神界にいるはずなのに。」
「…フン。知る必要もあるまい。手口は大体お前達と同じと思ってくれていい。」
金光聖母はそれだけ言うと一人背を向けた。
馴れ馴れしくするのが嫌なようだ。
「素っ気無いのね。いい加減意地を張るのはよしなさいよ。
もう崑崙・金鰲の間の争いは終わったのよ?
これからは双方の仙人達が力を合わせて
今の仙界を守って行かなくちゃならないんだから、もう少し心を開いてみなさいよ。」
蘭英が説得する。
なるほど、さすが妖怪統領たる張奎の妻だ。言う事はもっともだ。
「蘭英の言う通りですわ。」
珍しく雲霄がマジメに言う相槌を打つ。
さっきは猛烈にケンカ打ってたくせに……
「………」
金光聖母は黙ったままだった。


「ところであんさん!」
「何だ烏煙!?今真剣なんだ!あまり話しかけるな!!!」
相変わらず猛スピードで飛ばしている烏煙はふと目的地がどこなのか気になった。
確かにどこかを目指しているのはわかるのだが、
蘭英が捕われている場所はもちろんわからない。
だが張奎はあきらかに烏煙を「どこか」へ向かわせていた。
「どこへ向かってんの!?」
「下を見ろ!」
「え?」
言われるままに見下ろすと足元にキャラメルやらドーナツやら…
「これってもしかして…」
「ああそうだ!あの雲霄三姉妹の三女:マドンナの駄菓子だ!」
「あぁ…そう言えばあのヒトらも一応『仙女』やな…
でもなんで犯人はあんな人らさらってったんやろ…気が知れんがな…」
まさか自分から犯人の本拠地へ突っ込んで行ったとは知るはずも無かった。
「文句はいいからとにかく急げ烏煙!!」
「はいさ!」
ズドドドドドドドドドドド……
そしてさらに駆けて行く張奎達だった…

 

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