海の様に 風の様に
〜何よりも 大切なもの〜

 

集落の中央。夕陽を浴びて静まりかえった集落に聞こえるのは、
近くの海のさざなみの音と、雰囲気にはそぐわずパタパタと忙しく駆けまわる足音。
その集落の中央に高だかと積まれているのは、妖魔によって食い荒らされた人々の亡骸・・・
せめて亡骸だけでも、火葬してやろうという提案で、集落中から遺体を集めているのだ。
「これで全員・・・か。」
深手のため、首から腕を吊っている公明が、遺体の山を見上げながら言った。
「はい・・・たくさんの方が亡くなられましたね・・・」

―――いろんな物を・・・たくさん、無くしたな・・・
結局俺は、何もできなかった。
親父は帰ってこねえ、おふくろは守れねえ・・・一族は守れねえ・・・

「お兄様。」
心配げに雲霄が声をかける。
雲霄の顔を見た後、遺体の山の側にいる碧霄と瓊霄に目をやる。

―――でも、そんな俺にも、まだこいつらがいる。
守るべき、大切な妹達が・・・

「よし。じゃあ燃やすぞ。」
「けいしょう、カチカチする!」
もともと遺体を焼くために、遺体のまわりに積み上げておいた木の枝に、
幼い瓊霄が小さな手で慣れない手つきで火打石を打つ。
「おい!危ないぞ瓊霄。兄ちゃんがやるからそれ渡しな。」
「ついたぁ!」
「こら!火がこっち来たらどうすんだ!早く離れろ!」
兄に引っ張られながらも、自分でつけた火がどんどん広がって行くことが嬉しくて、
キャッキャとはしゃぐ瓊霄。
その炎が焼いているのが、自分の何であるのかを理解する事は、
幼い瓊霄の頭では不可能な事だった・・・

そして一時的に妹達を雲霄にまかせ、その場を離れた。

「三人の娘達を・・・よろしくな・・・」
―――・・・・あんたなんざに言われねえでも、わかってらあ。
妹達は俺が守ってみせる。必ずな。
たとえこの命を投げ出そうとも・・・妹達だけは、守ってみせる。
そう誓って、集落の離れの小高い丘に作った、母の墓の隣りにわら人形を埋める。
父の形見の、わら人形を。
―――だから、そこから見とけよ。・・・・親父、おふくろ。

再び妹達のもとに戻って、盛大な送り火を見ていると、
不意に後ろに気配を感じた。
「――誰だあんたは。」
「わしの名は通天教主。お前達四人には、仙人の素質があると見える。
わが九竜島で、修行を積む気はないか?」
九竜島・・・いつだったか聞いた覚えがある。

「その時になったら、ここを思い出してくれればいい。」

―――ふ・・・結局親父の言いなりかよ・・・俺とした事が、ざまあねえなぁ。
覚悟を決めて、夕陽を背にして通天教主に振り返る。
「いいだろう。どうせ行くあてもねえんだ。連れてってくれ。」
絶対に強く、なってやる。
もうこれ以上 誰も失わない為に。
大切な人を、なくさない為に。

絶対に 守ってみせる。

青年の誓った送り火は
風に乗り 海を越え
遥か九竜の地に 届くだろう
送り火は何にも 縛られず
己を信じ 夜も燃え
炎を絶やすことはなく
永久(とわ)に燃えているだろう

海の様に 風の様に

 

 

公明様の過去話。お疲れ様でした。この第六話で最終話です。
もうまさにこの場面はFF]のOPそのもの!
夕陽を背に、寂しさが漂うあの雰囲気。あれです!!
そして死者の魂魄が飛んでいるような・・・(ここで飛ぶ事はあり得ないが)

ちなみに、なにげに瓊霄ちゃんが一発で火をつけられたのには、わけがあります。
お話の中で書いてたらしつこくなりそうなのであえて書きませんでしたが、
瓊霄ちゃん、いちおう火属性ですよね?
だから多分火とは相性が・・・・なんてしょーもない理由。
こんなんに五行属性関係あんのか。こら。

とりあえず、ここまで読んでくださってありがとうございました。

 

・・・・・この物語は全てBGMはFF]のOPでどうぞ・・・・・

 

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