時を超える者達 |
こ み 上 げ て く る 想 い だ け が ・ ・ ・ |
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そ こ に い 触 た れ の た は 頬 誰 は だ 誰 っ の た も ? の ? |
ここは申公豹達が話している岩より少し離れた茂みの中。
「ねぇ、黒点虎。師匠達が何話してるかわかる?」
「別にそんな大した事は話してないみたいだけど・・・・」
待っている様に言われたはずの黒点虎と公雷子だ。
あの後結局公雷子のわがままに屈した黒点虎が、
しぶしぶこの茂みから申公豹達の会話を盗み聞きしているのである。
「師匠・・・なんであたしをあの人に会わせてくれないんだろう・・・」
「あの人妙な所で性格ひねくれてるからね。
君と一緒にいるところを見られたらマズイとでも思ったんじゃないの?」
そういうものなのかなぁ・・・
引き続き盗み聞きをしようとしていると、不意に後ろから声をかけられた。
見知らぬ、少女の声で。
「ちょっと!そこで何してるの!」
「うわあぁ!?」
思わず大声を出してしまった。
その声は当然申公豹達にも聞こえたわけで・・・
「のう?もう一人釣れたであろう?」
「・・・・あなたと言う人は・・・」
複雑な感情であった。怒りと驚愕が混ざり合って・・・
「さて、釣るべきものは釣った。わしはそろそろ場所を移そ―――」
「いいえ。あなたも来るべきではないのですか?」
申公豹の天性のするどい口調が炸裂した。
誰をも圧倒する力を持つ、この語調。
例え始祖でもこれには適わないであろう。
そして申公豹がこの言葉を放った根拠は、すぐそこにいた。
「お二人さんの話を盗聴していた、「悪い人達」を捕まえてきました!」
そこにいたのは、黒点虎とその上に乗っている二人の少女。
一人は公雷子、だが今セリフを言ったもう一人は・・・
「公雷子、その人は?」
ただの少女ではない。少々警戒しながら申公豹は聞いた。
外見はそうでもないが、何よりその少女の纏うオーラが違う。
まるで自分たちとは別格なのだ。
「・・・あ!自己紹介遅れてたわね。私は朧花(ルカ)!ただの放浪人よ!」
公雷子よりも早く本人が答えた。
「本当に「ただの」ですか?」
こんなオーラを放っているのに、「ただ」なわけがない。
自身の師匠である太上老君も超越したオーラを放っていたが、
それともまた違う。あるいはそれより上なのかもしれない。
―――――ん?待って下さいよ。私はこれと似たような感覚を感じた事がある・・・
同じようなオーラを纏った人物を、わたしは知っている・・・
そう思い自分の後ろにいる伏羲の方を振り向く。
やはり似たようなオーラを感じる。
―――まさかこの二人・・・!
「ところであなた達どうしてここにいるの?」
毎度の様に朧花は突然質問をしてくる。
「あたし達が上空を飛んでたら、下界にあの人を見つけたからよ。」
公雷子が説明する。
「あの人?」
「ホラ、あそこに立っている黒い服を着た人。」
「・・・!!」
朧花が驚いた表情で伏羲を見つめる。
しばらく驚愕の表情だったが次第にそれはこの上ない喜びの表情へと変わった。
「ふ・・・き・・・伏羲なんだね!?」
しかし対する伏羲は沈黙のままである。
それどころか、朧花から必死に目を背けようとしている。
今すぐにでもこの場を脱したいと言わんばかりに。
「・・・・おぬしは釣る予定ではなかったのに・・・・」
「どうして?何であたしと一緒にいたくないの?」
「・・・・・・・・・・おぬしはわしに会うべきではない。早急に立ち去るがよい。」
「そんな!!」
「立ち去れと言っておるのが聞こえぬか!!」
いつになく伏羲が怒鳴る。
どうやら彼女と伏羲は何らかの因縁があるようだ。
黒点虎から飛び降りながら朧花が負けじと返す。
「嫌だ!どこへも行かないよ!
この3000年の間、どれだけあたしが伏羲を探していたと思ってるの!?」
「うるさい!」
ビキン!亜空間を生み出すと伏羲はその中へ消えた。
「ちょっと伏・・・・・―――伏羲・・・」
やっと会えたのに・・・
さっまでの表情とは打って変わり、この上ない後悔と悲しみの表情だった。