君となら行ける
〜星空の下〜


昔々のお話で

遠い記憶のお話で、

もう目に映らぬお話で

それでも消えないお話で・・・

 

「望ちゃん!起きて!」
ゆさゆさ・・・
「むにゃ・・・もぉ食えぬ〜・・・」
ゆさゆさゆさ!
「望ちゃん!望ちゃんってば!!」
・・・・・・
仕方ないなぁ・・・
「あっ 望ちゃん!
あんな所に100年に1個の仙桃大吟醸『豊満』が!!」
すると望ちゃんったら!
今までびくともしなかったのに思いっきり跳ね起きてくれた。
「ナニっ!?・・・・て、何もないではないか。驚かすなよ普賢・・・」
くすっ 望ちゃんをからかうのって、やっぱりやめられないなぁ。
「望ちゃん。ちょっと外を見てよ。」
「何だ?こんな真夜中に・・・」
「いいから―――ほらっ!」
気乗りのしない望ちゃんを僕は無理やり外へ押し出した。
「星が見えるでしょ・・・きれいだね・・・」
「いきなり起こすから何かと思えば・・・
しかし、確かにきれいだのう・・・」
そう。これを望ちゃんに見せたくてわざわざ起こしたんだ。
こんなにきれいな星空、今まで見たことなかったもの。
夜空を埋め尽くさんばかりにいっぱい星が散らばって、
天の川まで輝いているんだもの。
こんな空、一生に何度も見れるものじゃないよ。
「ムゥ・・・!おおっ!普賢!あれを見よ!!流れ星じゃ!!」
「えっ?どれ?」
「あぁ・・・消えてしまった。もう少しはやく気付いておればのう!」


――――この時の「流れ星を見た」「見なかった」が・・・
いずれ「生きる」「死ぬ」に変わるなど・・・
どうして想像できようか・・・・
すぐ側にいるのに―――
今 隣にいるのに―――
この命が 消えてしまう日が来るなんて――――


「望ちゃん!あれ・・・何かに似ていない?」
不意に普賢は指でいくつかの星を結んだ。
「むぅ?どれだ?―――おぉあれか。何に似ているのだ?」
「(くすっ)自分のことなのにね。――あれ、望ちゃんの頭だよ!」
「何を言い出すかと思えばこのっ!!普賢!!!」
「あはははは・・・」
真夜中に関わらず、それからしばらく二人ではしゃぎあっていた。

東の空が明るみ始めた頃、二人は疲れ切って草原に寝ていた。
白鶴に聞いた話によると、
玉虚宮に戻らなかった二人を元始天尊様が千里眼で探し出して
白鶴に迎えに行かせたそうだ。
二人の寝顔は、満面の笑顔であったという・・・・

 

←戻る  「玉虚宮の約束」へ→