未来視達の出会いと別れ
〜出会い〜

 

ぐー・・・ぐー・・・
私は・・・一人だ・・・。
この桃源郷で生活をはじめて結構経つけれど
寂しいと思ったことは一度もない。
寂しいとか、空しいとか、うれしいとか・・・
そんな事はもうどうでもよくなっちゃんたんだもの。
今はただ、こうして眠っているだけ・・・
こうしていれば、誰も話しかけないし、話す必要もない・・・
誰も私とは関わりを持たない・・・

その時、私はちょうどレム睡眠中だった。
向こうから誰か近付いてくる。見た事のない顔だ。
12歳ごろの子供・・・かな?
白髪だけど髪の両端を結んでいる。でも着ているものはボロボロだった。
相当さまよってきたのか、とてもよたよたしている。
放っておけば死んでしまいそうだ。
その子はうつむいたままこっちへ来た。
――また「何で寝ているの?」とか聞いてくるのかなぁ・・・――
でも違った。その子は私の前まで来ると、私をただじっと見下ろした。
何を問うのでもなく、ただ見下ろしていた。
少しだけ私は驚いた。こんな子供は初めてだったから。
似たような感覚は5000年後にもう一度味わうんだけどね。(太公望のこと)
そして思わず私の方からその子に話しかけようとした。
「・・・・・ねぇ、キミ・・・」
あ。
すでにその子は目の焦点が合っていない。間もなく私の方に倒れ掛かってきた。
「・・・・気を失ってるみたいだね・・・どうしようか・・・」
迷ったけど、どうしようもない。少し面倒くさかったけどその子を抱えて
私の家に戻ることにした。


私が連れ帰った子供・・・
人は後に彼をこう呼ぶ・・・

「申公豹」と。

←戻る   「老子と彪」へ→