天邪鬼
―前編―

 

「妲己様・・・御用はなんでございましょうか・・・」
声を合わせ、3匹の子鬼がひざまずく。 恐ろしいほど美しい、妖魔の妃に。
「お前達を呼び出したのは他でもない・・・西岐軍の崩壊を招くため・・・。」
風に風鈴が揺れるような、美しい声。しかし、「柔らかい・暖かい」などは一片もな い。
あるのは、氷のように冷ややかな感触。
「お前達に力を与えます!必ずや西岐の軍隊、及び仙道を一掃なさい!!」
ふいに、声が厳しくなった。美しさが、残忍なものへと変わる。
狐のような目で、ココには居ない道士を睨む。
「ははっ!!」
光に包まれた子鬼が、窓から飛び出していった。
「妲己様・・・あんなヤツらに、西岐が倒せるとお思いですか?」
「そうだよ!あんなヤツらに命じるくらいなら、アタイにいかせとくれよ!!!」
女の声が響く。心なしか、2人とも憤慨しているようだ。
「判っています・・・。・・・・軍師さえいなくなればよいのです。そうすれば、西岐など簡単に・・・」
そこまで言って、笑いがもれる。低く、押し殺した笑い。
やがてそれは、妃を最も美 しく、恐ろしく浮かび上がらせていった。

「天化〜?どこへ行ったんだい〜?もうすぐ軍議が始まるよ〜!!」
のほほんとした、優しい声。微風が、それを遠くまで運ぶ。和やかな世界。
・・・対 妖魔戦争真っ只中というコトを除いては。
「あ〜〜!!見つけた!!!!」
探し人が見つかったらしい。怒りと、そして微かな嬉さが混ざった声。
草を踏み分け、その人のもとへと向かう。
昼寝をしていたようだ。そこは、昼寝には 絶好の場所だから。
「天化!!早く起きてよ!!軍議、始まっちゃうじゃないか!!」
怒鳴り声が響く。これで寝ていられる人がいたら、お目にかかりたい。
「全く・・・ほら!早く起きて起きて!!
また遅れちゃったら、今度は皆につるし上 げくら・・・」
「うるせぇよ・・・」
「え?」
思ってもみなかった言葉。其処には、「今起きるよ・・・」といった感じはない。
いつもだったら、「しょうがねぇな・・・」と言って起きるのに。
いつもと違う雰囲 気に、流石の太公望も戸惑った。
「天化・・・?具合でも悪いの・・?」
「軍議?さっさと始めりゃいいじゃねぇか・・・。俺にはカンケーないね。」
ただ、言葉から滲み出る不機嫌さ。一体どうしたというのだろうか。
「天化?何言ってるのさ!!早く起きてよ!!軍議なんだってば!!」
「るせぇ!!ンなもん、カンケーねぇって言ってるだろう!!」
大声で怒鳴られた。明らかに様子がおかしい
「ねぇ!!どうしたの?!どっか痛いの?!大丈夫!?」
「やかましい!!!!どっか行きやがれ!!」
そう言い放つと、天化は森の奥へ消えていった。
「どうしたっていうのさ・・・。もう知らない!!」
こっちはこっちで、ふくれつらで駐屯地へと戻っていった。

(天化、一体どうしたんだろう・・・)
そればかりが気になって、仕事は全く終わらない。
気がつけば、もう日付が変わって いる。 結局、軍議も成り立たなかった。
陣営の全ての人が1度は眠ったというのに、
「師」という旗が揺れる天幕から、灯りが漏れないことはなかった。

翌朝、寝ぼけ眼を水で引き締めた太公望は、朝食を摂るべく食堂へ向かった。
しかし。
「なによ!!なんでコレ食べちゃいけないの!?」
「るせぇ!!」
「てめぇ、消えやがれ!!」
「皆さん、なんてコトしますの!?」
聞こえてくるのは怒鳴り声。それも、あちらこちらから。
仙道だけでなく、兵士まで喧嘩している。
テーブルの上に食べ物はなく、床の上に盛られている。・・・かなり脈絡なく。
「ちょ・・・皆さん、どうしたんですか!?」
急いで仲裁にはいるが、其処に向けられるのは敵意。普段なら協力してくれる人達まで・・・
「どうしただぁ・・・?コレ見りゃわかるだろうが!!」
判らない。ただ、軍全体で喧嘩をしているというコト以外。
「そんな・・わかんないよ・・・。一体なにが原因でこんなコトに!?」
「・・・あんた、大将に向いてねぇよ。」
「雷ちゃん、おにいちゃんのコト嫌いになったのだ!!」
「失礼します。」
「お前、そんなんでココに居ていいのか?」
皆、敵意に満ちた眼差しで太公望を見る。全ての人が、太公望に敵意を向けた。天化 まで。
当惑。 そうとしか言えない状態で、太公望は自分の天幕へ戻った。
「ひひひ・・・やったぜオイ!」
「あぁ・・・後は、ヤッコさんが壊れてくれるのを待つだけだな・・・」
「まさか、こんなに上手くいくとはなぁ・・・」
駐屯地から、少し離れた森の中。 3匹の子鬼が、ほくそ笑んでいる。手に、薄汚い袋を持って。
「それにしても、妲己様は、ホントすげぇな・・・」
「あぁ・・・オレ達だけの力じゃ、<逆の豆>はココまで育たねぇぜ・・・」
「あの水、妲己様お手製だったのかな・・?」
彼らは、天邪鬼。眠っている間に、心に<逆の豆>を植え付ける。
その豆がどこまで 育つかは、かける水に注ぐ妖力次第。
強力な水ができれば、西岐軍をこんな状態にするコトくらい、容易い。
「今日は戦闘が起こりそうだし・・・どうなるか、見物だな。」

(そんな・・・嘘だろう・・・?)
天幕の中では、太公望が頬を濡らしていた。



涼森 凛様のコメント
すいません!!凛はコーエーほとんど知らないんで!!かなりテキト―なのがちらほら・・・
時代背景もかなり無視。すいません・・・・・すいません・・・・ごめんなさい!!
時間足りなくて、前後編になっちゃいました・・・すいません!!申し訳ありません !!!!!!

管理人:浪老子のコメント
すごいですっ 凛様はコーエー版プレイされた事ないはずなのに、
小説だけでここまで的確に把握なさってる・・・
太公望、ここまでキツイとやつれちゃいますね〜・・・
天化サン、後編で何とかしてあげなさいよ(笑)

後編に期待!

 

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