最強の敵

 



臨潼関を守る、魔家四将と呼ばれる道士たち。
妖魔最強の武将と言われる彼らは、強力な宝貝を操る。
砦への道は、急な斜面を挟んだ二本の道。あきらかに敵に有利な地形だった。
朝歌を目前にして、これ以上の戦いは避けたかったのだが……
そうも言っていられない。
「皆、気をつけて。くれぐれも、挟まれないように」
皆の実力を知っている太公望は、無駄な指示はしない。
それだけ言って、新軍を阻む最後の砦の前に立った。

*

魔礼寿が荒風幟を振り上げる。あれには相手を拘束し、
業火を浴びせるという力がある。捕らえられるわけにはいかない。
打神鞭を構え、敵の攻撃に備える。
その時、突然大地が揺らいだ。
道から足を滑らせる。
「うわっ!?」
「太公望!」
天化がとっさに腕を掴んだものの、いきおいは止まらず、
二人して斜面を転がり落ちる。
「……ぐえっ!」
「――ご、ごめん、天化」
「地震符なんか使いやがったバカはどいつだ〜っ!」
宝貝の直撃は免れたとはいえ、いきなり戦場から脱落する羽目になってしまった。
斜面は急で、とても登れそうにない。
再び、大地が揺れた。
今度は符印ではなく、誰かの宝貝の仕業のようだ。
全体が陥没したような衝撃があり……またしても、地上が遠くなる。
「あとのメンバーは誰だっけか」
分かっているのだか、一応確認してみる。
「嬋玉、那咤、韋護さん、趙公明殿だけど……」
「あいつら、俺たちの存在を考慮に入れると思うか?」
蒼白になり、祈るように手を組んで、首を横に振る太公望。
真正面の敵しか見ていない嬋玉、那咤、趙公明。
韋護は近くに居れば気が利くが、目に入らないところの仲間のことは
気にしないマイペース。
「なんとか登れるところを探すぞ。……生き埋めになる前にな!」
「わ、分かった……ひゃああっ!」
雷が轟き、上から土砂が崩れてくる。
必死で避ける大将に、逆らう理由などなかった。

*

一方その頃、地上では。
「蛟竜金鞭!」
趙公明が、親友の形見である蛟竜金鞭をふるう。
使い慣れ始めた宝貝は、彼の術力を得て大地をえぐり、
雷を操る魔礼海の碧琵琶を叩き落す。
「冬将羅刹!」
負けじと那咤が飛電槍を振り上げた。
放たれた衝撃波が、戦場を真二つに両断する。
青雲剣を使おうとしていた魔礼青が、弾き飛ばされて倒れ臥した。
「降魔杵」
ぼそりと呟かれた韋護の言葉が宝貝の力を引き出し、
魔礼紅を足場ごと大地に叩き伏せ、とどめを刺す。
抜群の素早さと、空中を移動できる機動力を持つ西岐軍の精鋭たちに、敵はなかった。
あっさりと最強と名の高かった四人を打ち倒し、砦に足を踏み入れる。
振り返った嬋玉は、ようやく仲間が少し足りないことに気がついた。
「あらっ? 太公望さんは?」
「天化もいねーぞ?」
彼らの強さをよく知っている仲間たちは、心配など少しもしていない。
「やーね、どこに行ったのかしら。太公望さーん、早く魔家四将を封神してぇー!」
最初に地震符で、二人を地下に叩き落した娘が、
自分の活躍を見てもらえなかったことを怒りつつ叫んだ。

*

なんとか生き埋めは免れたものの、最後に転がり落ちてきた岩が
行く手をさえぎって、身動きが取れない。
敵にではなく、味方にあやうく封神されかけた二人は、
まだまだ地下から脱出できずにいた。
「あいつら、後でコロス……」
「ふにゃ〜(@_@)」

END


るい様のコメント

30分仕上げ(笑)。
浪老子様、面白いリクエストありがとうございました〜。
最強の敵は味方!(^^;
大将、苦労してます……。

管理人:浪老子のコメント

あはははは(大笑い)
味方に生き埋めにされる大将、それに「全く」気付かない味方。
嬋玉ちゃん、あなた自分で叩き落しといて・・・
魔家四将よりも、味方の方がかなり手強かったりして。
彼らの考えがわかるから怖さはより倍増。(爆)

絶対夕方になっても見つけて貰えませんよ。彼ら。
天化サン、がんばってください^^;
面白いお話をありがとうございましたっ!

 

 

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