壮絶!枕投げ合戦!!

 

「枕投げ?」
「うんそう。望ちゃんにも是非参加してもらいたいんだけど・・・」
「うー・・・・・」
突如普賢が見せてきた1枚の紙には、こう記されていた。

『崑崙山枕投げ大会!
優勝者には豪華賞品が!!!』

「・・・・・で?なぜにわしが?」
「他の皆は既に出ることになってるから、あとは望ちゃんだけだよ!」
しかしイマイチ気が進まない太公望。
「でものう・・・わしはだらけ―――」
「出ますよねっ おっしょー様!!」
「なっ・・・ぶ、武吉!?」
「そうだよね!じゃあ僕主催者の人に言って来るからー」
何故か突然話に割り込んできた武吉によって、
太公望は参加を余儀なくされた。

「な、なぜにー・・・」

大会当日。
元気に駆け出して行く武吉と、
普賢によって引きずられて行く太公望の姿がそこにあった。
「ほらっ ついたよ!」
「ついに来てしまったのうー・・・」
既に会場には他の面々が集っていた。
どうやら太公望達がラストだった様だ。
「・・・にしても普賢よ。」
「何?」
「なぜに「枕投げ」なのだ?」
「さぁ・・・」
天使の笑顔は、何か訳ありげだった。
――――こやつ、何か知っとるな・・・?
「吐けぇ〜吐かぬかぁ〜〜〜」
「だめだよ望ちゃん!」
普賢にぐるぐる巻きつく太公望。
しかしこたえはわからぬままついに大会開始の時間がきた。

「えーでは〜、これより「崑崙山枕投げ大会」を開催します。
まずは簡単にルール説明を。
皆様には、二手に分かれていただいて文字通り枕投げをしていただきます。
枕が当たった人は、チームから抜けて下さい。
最後まで残っていた方が、優勝です。
ま、簡単なものですね。」
何故かステージで話す白鶴童子の説明を何とも無しに聞いていた。
「だからなぜそんなモンで大会を――」
「ただし、この枕はただの枕ではありません。」
やはりそう来たか。
あまり変化の見られない白鶴童子の目に、凶悪な光が宿る。
「この枕には、仕掛けがあります。
普通の枕もありますが、枕の中には当たると爆発したり、
中に何かが入っていたりしますので、十分にご注意を。」
「――――――――」
マジかい。
「待て白鶴!!わしはそんなこと聞いておらぬぞ!!」
「でも、おもしろそーですよね!おっしょー様!!」
血気盛んな連中は、早くも沸き立っている。
「あたしは当たんないわよーっ!」
「枕に当たってまっくら、なんてな」
「う・・・・」
・・・・・・・
「大丈夫だよ。望ちゃんなら当たらないから。
最後まで残ってたら豪華賞品だよ!!」
「それって「枕投げ」よりは「ドッジボール」ではないのか・・・」

とりあえずくじびきで二手に分かれ、
後は開始を待つのみとなった。
「では皆様・・・・・開始!!」
どわあああああああ・・・・・
開始のホイッスルと共に、猛烈な数の枕が空中を舞った。
中でも引き立って目立つのはこの・・・
「行けっ!!大リーグエビ投げドリームボール28号ぉっ!!」
「ぎゃあああああああっ!!!!」
得意の分裂魔球方式で飛ばすのはいつもの五光石ではなく、枕であるが、
それでも彼女の剛速球の前に何人もの仙人・道士が倒れて行った・・・
「う・・・お、恐るべし嬋玉・・・」
「おっしょー様!ぼくも頑張ります!!それっ」
天然道士グループも負けちゃいない。
一体一つかみでいくつの枕を持つ気だ、こやつ。
「あ・望ちゃん危ないよ。」
「ぎゃああああ!!!」
何故か複数の枕が一気に襲いかかってきた。集中攻撃だ。
「なぜにわしが!?」
何とか間一髪で全ての枕をよけきる太公望。
「フー、フー、フー・・・・」
「すごいや望ちゃん。でも油断するのはまだ・・・」
普賢のセリフが終わらないうちに、無情にも一つの枕がはるか頭上から
落ちてくる。

ひゅう〜〜〜〜〜・・・
ドカッ

「・・・・・・・・・」
「よかったね。何も無い枕で。でも惜しかったな。
望ちゃんがここで抜けちゃうなんて。」
だから何故普賢がまだ残っている?
とりあえずチームから抜けて観戦することにした。
「おー太公望、君も抜けたのかい。」
「太乙ではないか!」
「いやー・・・私とした事が・・・
地中からいきなり出てきた土行孫の枕を避ける事はできなかったよ。」
「・・・・・あやつ・・・・」
こういうときだけ頭が効くのか、単なるバカなのか。
とりあえずあきれる事しかできなかった。

太公望が抜けて数十分。まだ大会は続いていた。
さすがに残っている人数は10人を切っていたが、
それでも見ていてよく疲れないものだと思う。
「・・・・・・で、なぜ普賢がまだ残っておるのだ?」
「嬋玉と土行孫も何故か残ってるよねー・・・」
「と言うか、レベルが段々違ってきている気が・・・」
まず、何も無い枕というのがもう無い。
全て必ず何かが入っていた。
爆発したり、宝貝が入っていて当たると発動したり、
誰かの鉄アレイが入っていたり、
はたまた誰かの未確認生物が入っていたり・・・
この辺りになると、当たった者は大抵血を吹きながら
チームから吹き飛ばされた。
「そろそろ主催者の顔も気になるのだが。一体誰が?」
「私も思うよ。こんな大会開くんだから
普通の神経の持ち主ではないと思うな。」

一方こちらは現場。
「今度こそ普賢に当ててやるんだからっ!」
例の剛速球を投げようと嬋玉が構える。
「(彼女の球の速さは155km/s!
今土行孫君も地下から来ているのはわかってる!
じゃあ・・・こう避ければ!!)」
数メートル後ろに走ると、嬋玉が大声で叫んだ。
「行けッ!!」
「今だ!」
枕が嬋玉の手から離れると同時に横に大きく避けると、
悲しいかなとてつもない衝撃波を伴った枕は
ちょうど地中から出てきた土行孫に・・・
「ぎゃああああああっっっ!?」
「いやぁ!ハニー!!!?」
しかも土行孫を襲ったのは衝撃波+枕+爆発。
落魂の呪符でも封神されないほどの者であるからこそ、
耐えられる衝撃ではあるが・・・
あはれ土行孫は血を吹きながら吹き飛ばされた。

「う・・・恐ろしい奴じゃ、普賢・・・」
「数学者の真髄を見た気がするよ・・・」
「あやつ、本当に平和主義者か?」
いたく感心して見入っている太乙と、
もうあきれ果ててほとんど言葉の出ない太公望だった。

時間は更に流れて。
「うわぁっ!」
「武吉くん!」
向こうのチームで唯一生き残っていた嬋玉の枕を真に受けた武吉が、
ついに枕に当たって吹き飛ばされた。
「ついに一対一になったよ・・・」
「なぜに普賢が・・・」

いわゆる。
普賢vs嬋玉

サシの勝負となって、会場は一層沸き立つ。
「いけー!!まけるなー!!」
「普賢真人様がんばれー!!」
「嬋玉ちゃんファイトー!!」
現場の方は現場の方で、
「悪いね嬋玉ちゃん・・・君の土行孫をあんな目に遭わせてしまって・・・」
「今更遅いわよっ よくもあたしのハニーを!!」
にらみ合い(と言うか、嬋玉の一方的な睨みつけ)が続く中、
白鶴のアナウンスが響く。
「えーでは。これより一騎討ちをはじめます。
先に当たった方が優勝者とします。
では両者、枕をもって下さい。」
「気が進まないけど・・・」
ここまで残っておいて、何を言う。
「絶対にハニーの仇を取るんだからっ!!」
「では・・・始め!」
わああああ!!!
沸き立つ会場の中、嬋玉の先制攻撃が始まる。
「食らえ分裂魔球!!」
「よっ はっ よっと!」
ひ弱に見える身体にあわず、その動きは軽やかなものであった。
最後の一投が終わったところで、普賢が枕を投げた。
「ごめんね・・・」
「しまっ・・・」

ボフッ

どうやら、めずらしく何もない枕だった様だ。
これで普賢の勝利が決まったかと思いきや
ほぼ同時に

ボフッ

「?」

太公望の時と同じく、死角から飛んできた枕に当たってしまった。

「・・・・・どっちの勝ちになるのかのう?」
「さあ・・・」
やがて会場全体がざわつく。
はじめはざわつきに過ぎなかったものがやがて・・・
「今なんて言ったてめえ!」
「もう一度言ってみろ!!」
「こっちの勝ちに決まってんだろが!」
「俺は見たぞ!こっちが先に当たった!!」
「いーやあっちだ!!!」
・・・暴動に変わっていった。

「普賢!!何とかせぬか!!」
「みんな、僕が負けた事にするから、暴動をやめてよ!」
やっと出た、普賢の平和主義者としての顔。
しかしこれには限度がある。
そう。。。仏の顔も・・・
「お願いだよ!!やめてってば!!」
「ちょっとあんたら、何であんた達が騒いでんのよ!!」
普賢2回目の忠告。
しかし会場は収まる気配を見せない。
「・・逃げた方がよいやものう。」
「うん。」
普賢のカウントダウン説得(?)は続く。
「やめてって言ってるのが・・・わからないのかな・・・」
3回目。太公望。太乙共に逃走しようとしたがまたしても。
「あれー?おっしょー様達どこいくんですか?」
「武吉!!止めるな!!」
「なぜですかー?」
「それはー・・・」
全く鎮まらない会場。足止めされる太公望。
そして・・・
「しょうがないな・・・・」
「ちょ・・・ちょっと、普賢?」
ヴン・・・・
ポチポチポチ カチャッ

ベッ

太極符印に現れた、「核融合」の3文字。

「ぎゃああああ〜〜〜〜〜・・・・」

次の瞬間、会場を襲ったのはまばゆい閃光と、いくつもの叫び声だったとさ。


「わかりあえないって、悲しい事だね。」



END


後日談。
太公望「結局主催者は誰だったのだ?」
普賢「実はね、僕が天尊様にお願いして、
白鶴に試合進行を頼んだんだけど・・・
景品は望ちゃんのために仙桃10年分だったのに。」
太公望「おぬし〜〜〜〜!!!」

 

 

戻的喜媚世界