「白」

 

―――白くあれ。

ただ、白であればいい。

一点の穢れも知らぬ、無垢な純白であれ。

 

お前が穢れる必要は無い

 

朱に染まるのは・・・

 

俺の役目だ―――

 

 

・・・・それだけ・・・
ただ、それだけ言い残して。
朱呂様は去ってしまわれた・・・

「最期に」――あんなにも鮮やかな想いを残して・・・

朱呂様の、初めて私だけに向けられた・・・笑顔。
そして初めてこの唇に感じた・・・あの感触。

今まで朱呂様からお聞きしたどの言葉よりも短く
けれど・・・どの言葉よりも、朱呂様の思いが込められていた言葉。

 

これが、最期だなんて―――!!!

戸土   「・・・・朱呂様ーーー!!!」

・・・・ただ、貴方の名を叫ぶことしか、できなかった・・・・・

 

それは遙か1000年も昔の事。
天界大戦も終盤、
しかし神側は雷神が解放した阿修羅の暴走により
壊滅的な衝撃を受けていた。

雷神   「致し方ない・・・阿修羅を再度封印するか・・・」

水神(レヴィアス)「一体誰が!?今あの阿修羅に立ちはだかることは可能なのですか!?」

雷神   「私が責任を持って封印する。私に万が一の事があれば、
       水神、お前が他の神をまとめ天帝様をお助けしろ。」

陰神   「しかし、必ず封印できると言い張れますか。」

雷神   「何を言うか陰神!!」

陰神   「不安は隠しきれないでしょう。しくじるかもしれぬと。」

雷神   「では、お前にはわかるのか!今どうすればよいか!!」

風神   「・・・・・私が、行きます。」

ALL   「風神!?」

風神   「・・・阿修羅を力ずくで抑えようとなさる皆様では、
       絶対に彼を封印することは出来ません・・・・・」

それだけ言い残し、立ち去る風神。

風神    「阿修羅・・・・」

阿修羅   「次はお前か!」

風神    「私を殺して気が済むのなら、そうなさいませ。」

阿修羅   「では、そうさせてもらおうか。」

風神     「あなたが望むのは、一切の破壊、破滅、そして・・・沈黙でしたね。」

阿修羅   「そうだ。」

風神     「そうしたいのならそうなされば良いでしょう。
         この世界にはもはや貴方に対抗し得る力を持つ者は
         いないでしょうから。可能かもしれません。
         ・・・・・ですが、私は悲しいのです。」

阿修羅    「だろうな。」

風神      「・・・貴方が、独りになってしまうのが寂しいのです・・・・」