フォレスのアトリエ・・・?

 

近頃、この天使界にあやしげな空気が流れている。

それほど邪悪なものではない。

しかし、気にせずには入られない。

放っておくにはあまりに危険すぎる・・・・

 

この、臭い。


ウリエル 「一体なんだこの臭いは・・・・
       ? あちらから来ているのか・・・?」

おそるおそる臭いをたどる天使が一人。
天使界一の数学者:ウリエルだ。

ウリエル  「・・・・それにしてもこの臭いは・・・っ
       眩暈がしそうだ・・・放っておくことは、どう考えてもいいことにはなりそうにない・・・」

そう。見つけ次第たたきつぶすはずだった。
この諸悪の根源を・・・

ウリエル  「・・・・なんだ?これは・・・??
        いつの間にこんな建物が、天使界に!?」

それは気の抜けるような、如何とも形容しがたい形の建物。
曲がりくねった煙突、爆発したのか黒いすすの跡が痛々しい。
溶けかかった屋根。

・・・・・この建物の中で、何が起こっているというのだ!?

ウリエル  「少なくとも只者の仕業ではない!!
        一刻も早く解決しなければ!!」

建物の調査を始めようとしたとたん、中から爆発音が。
そして、やけにかん高い少女の声・・・

ウリエル 「な・・・・少女!?
       中にまだいるのかっ 早く救出しないと!!」

が。

勢いで入った建物の中は、外にまして異臭が漂う。
加えて、怪しげな色の煙が幾重にも漂う。
・・・立っているのもやっとで、吐き気を抑えるのが精一杯だったが
この奥にいるであろう被害者の少女を救うまでは、
引き返すわけには行かない。

ウリエル 「しかしこの臭い・・・・っなにを・・・混ぜたらこんな・・・・っ」

??? 「ひゃあっっ」

また少女の声。そして爆発。

ウリエル 「無事・・・・かっ!?
       待って・・・・・いろ・・・・っすぐに、助け・・・・」

あまりの悪臭によろめきながら、
なんとか最奥の部屋にまでたどり着いたウリエル。
しかしそこでの風景を見た瞬間、思わず絶句した。

今までたどって来たどの部屋よりもきつい臭い。
一寸先も見えなくなるほどの濃い煙。
建物の煙突よろしく曲がりくねったフラスコ。
爆発で割れた試験管の破片。
何の実験をしているのかこれまたアヤシイ色の炎。
傍らには何かの骨やら毛皮やら枝やら・・・

ウリエル 「・・・まさか・・・っこの事態はお前が・・・?」

???  「え?この事態って?」

ウリエル 「わからない・・・か・・・っこの煙、炎、器具・・・どう見ても普通の事態じゃないだろう!!」

??? 「そうかなの〜・・・・?あ、でも安心してなの!
      新薬作ってみたなの、何だか気分悪そうだからこれ飲んで治してなの♪」

差し出されたのは、あきらかに飲んだらどこかがイカレそうな粘着質の液体。
それも深緑色と灰色と黄土色が混ざったような、
良薬であろうとも絶対に飲みたく無くなりそうな色。

ウリエル 「本当にその用途の薬なのか、これは・・・?」

??? 「たぶん」

両者 「「・・・・・・・・・」」

沈黙の後、ウリエルが爆発する。

ウリエル 「多分では済まないだろうが!!だいたい、勝手に許可も無く
       天使界にこんな怪しい建物を作って立てこもり、
       あまつさえ正体のわからない実験を繰り返すなど・・・
       どう考えても、無意味だ!論外だ!立ち退けいますぐに!!」

??? 「それは困るなの〜っ!
      あたし、こことは違う世界から来て、『賢者の石』のかけらを探してるなの、
      でもなかなか見つからなくて・・・しかも敵は強いし、
      何か強力な武器や薬でも作らなきゃ、対抗できないなの!
      ・・・・対抗できなきゃ、『賢者の石』のかけらは取り返せないし、
      元の世界にも帰れないなの・・・・」

ウリエル 「・・・・・・・・・」

少女の言葉に少し同情を覚えたのか、
ウリエルは少女に退去を強制することはやめた。

ウリエル 「お前、名は?」

フォレス 「フォレスなの〜」

ウリエル 「わかった。フォレス、立ち退けとは言わない。
       お前も必要で行っていることならば。
       それに、我ら天使の害になることでも無さそうだしな。」

フォレス 「ほんと!?」

ウリエル 「ああ本当だ。・・・・・ただし。」

フォレス 「?」

ウリエル 「実験をする時は私の監視下のみにしろ!
       勝手に変な薬ばかりを作るんじゃない!!」

フォレス 「え〜?でも、錬金術の実験なの、天使さんに錬金術の実験わかるなの?」

ウリエル 「見くびるな。これでも私は『天使界一の知識者』と呼ばれる者だ。
       少なくとも、お前よりはまともな調合が出来る自信は100%、いや
       今は200%ほどあるな。」

フォレス 「なにそれー!?・・・でも、いいもん。
       お師匠さまは1000%って言ってたもん。」

ウリエル 「・・・・・お前・・・・」

こいつ、本物だ。本物の天然だ。

ウリエル 「それを自慢するな、この、ばか者っっ!!」

 

かくして、自称『天使界一の知識者』ウリエルによる

実験特訓が始まった。

しかし・・・・

事態が改善されたのかどうかは、

言及しがたいんだとか。