贖罪
どうか救わせてください
俺の最期のこの祈りで・・・
数千年前。
神界と天使界(仮称)の境界に程近い場所。
一人の天使が神界に迷い込んできた。
偶然その天使を見つけた雷神。
雷神 「お前は・・・」
???「・・・く・・・・」
この頃から既に天使と神の仲は悪くなりつつあったが、
その天使は余りにも弱りすぎていた。
もはや虫の息であった。
だがその天使はなお、どこかへ懸命に向かおうとしていた。
雷神 「・・・どこへ向かうつもりだ、その様な身体で。」
???「・・・どう・・・か・・・お見逃し下さい・・・
俺にはまだ、最期にするべき事が・・・・・」
雷神 「・・・するべきもなにも・・・・お前、その羽では・・・」
その羽は何とかぎりぎり翼の原形をとどめているのみだった。
羽根はほとんどむしられ、全体に血が滲んでいる。
骨がむき出しになっている部分まである。
・・・・とても飛べる翼ではなかった。
雷神 「・・・・・・・・」
雷神が沈黙する間にも、その天使は己の身体を引きずりながら
ある一点を目指していた。
体とは反対に、わずかな揺るぎも見せない強い瞳で「そこ」を捕らえながら。
しばらく見ていたが、やがて本当に限界が来たのか、
ついにその天使は倒れて、起き上がらなくなった。
近くまで行ってみると、まだ息はある。
???「く・・・そ・・・・ここまで・・・なのかよ・・・・っ
まだ死ぬ訳には・・・・・・」
・・・理由はわからんが・・・
こんなになってまで任務を遂行したいという気持ちは・・・
この天使も、我々神も変わらんものなのだろうな。
・・・黙って見ている訳にはいかないだろう。
雷神 「事情によっては、私がお前を手伝ってやってもいいぞ。」
???「え・・・本当・・・ですか・・・」
雷神 「嘘を言ってどうする。・・・さあ、お前の身体も・・・時間が無いのだろう。
手短に話せ。」
???「・・・・俺は・・・盗賊の守護天使なんです。」
雷神 「盗賊!?」
???「やはり・・・笑いますか、貴方も・・・
しかし、彼らにだって守護は・・・必要なんですよ・・・!」
天使の拳に力がこもる。
???「俺は・・・自分の羽を与えることで、彼らに守護を与えてきました・・・
昔はそれで・・・よかった、でも・・・・
最近になって・・・人界の治安が悪いのか・・・っ
盗みを働くものが増えて・・・俺の再生機能も、もう限界で・・・
・・・俺の命も、能力も、もう・・・これが最期になる・・・・」
必死で立ち上がろうとするが、もう力が出ない。
???「遠く・・・東方の国に・・・俺の守護を必要とする人間が・・・・いる・・・っ
その者を・・・守りたい・・・救いたい・・・っ」
盗賊の守護天使、か・・・・