涙・血・笑顔
序章…偽りの子守唄に絆を見る事・上
こちらB班…
いつもはただやかましいだけの班…
しかし…
今この班に恐怖が襲いかかろうとしていた…
謎の声 「まる……やまぶきまる……」
山吹丸 「?邪韓竜?呼んだか?」
邪韓竜 「いいえ?呼びませんけど?」
山吹丸 「気のせいか…」
謎の声 「ぼう……や……ぼうや………私の坊や……」
山吹丸 「何だよ師匠か?気色悪いなぁ!」
足牙 「あほ。オレは何も言うてへんわ。」
山吹丸 「っかしーなぁ?確かに誰かの声がするのだけどよぉ…」
足牙 「なんや?ついにボケが始まったんか?お前も可哀相なヤツやのう
。」
山吹丸 「ちげーよバカ!何か女の声がするんだよ…。んで俺のコトを『坊
や、私の坊や』ってすげーかすれた声で呼んでよォ…」
足牙 「な…ちょ、それユーレー違うんか?言うとくけどオレお払いはで
けへんで?」
謎の声 「坊や……どうして……逃げるの?おかあさんは……ここよ…。」
山吹丸 「!?」
謎の声 「さあ…おいで……私のかわいい…坊や………」
山吹丸、徐々に意識が遠のいていく…
そして倒れる。
足牙 「……!おい…山吹丸!?しっかりせえや!山吹丸!?」
邪韓竜 「どうしたんですか!?」
足牙 「このアホ…『幻影』の術にはまりよった…。自分の母親の声が聞
こえとったらしいわ…。まずいでこりゃあ…。ヘタすると黄泉の
国まで連れてかれるで!?」
邪韓竜 「ちょっと待ってください!『幻影』の術ですって!?つまり……
今の彼には僕等がどんな治癒術をかけようと声をかけようと一向
に効果がない…つまり彼は…術から抜け出せないんじゃないです
か!?」
足牙 「いや…やつを術に引き込んだんが母親やったらまだ手はある…。
今オレらの味方で…幼少のコイツを知っとるやつが一人だけおる
…。こいつの最後の心の糧がな…。」
邪韓竜 「! それって…もしかして…」
足牙 「(通信機を手にとって)ああ…その『もしかして』や。イチかバ
チか、賭けてみるしかない――――!」
さぁ、そのイチかバチかの相手とは―――!
こちらC+E班。
やっぱり騒がしかった…。
蒼龍 「早くしろ!紅腕狼見失うぞ!」
苦楽夢 「んなこと言ったってこれが最高速度なんだぜ!?文句言うんじゃ
ねえ!」
皇雀 「二人ともやめてってばぁ!」
残輝 「…まぁ…これもE班と合流した運命ですかね…ι」
葛 「そ。こんくらいの覚悟はつけとかないとな。」
死神 「旅は道連れ世は情け…か…。――?おや朱呂殿?いかがなされ
た?」
見ると、朱呂は何か悪いものを感じ取ったのか、真剣な目つきをしていた。
朱呂 「いや…ただ悪寒がしただけだ。…耳に義弟(やまぶきまる)の悲
痛な声で『朱呂義兄貴』って叫ぶ声が聞こえて…」
死神 「兄弟の直感は…あなどれんからな…」
残輝 「(ジリリリリ…)通信だ!―――はいこちらC+E班残輝…え!?
足牙様!?どうしたんで……!!!!!!!」
残輝、驚きの余り言葉を失う。
苦楽夢 「どうした?残輝。」
残輝 「朱呂様!!山吹丸様が!!」
朱呂 「!?山吹丸がどうしただと!?」
残輝 「誰かによる『幻影』の術に…はまられたそうです…」
全員 「!!!???」
葛 「誰の姿で引き込まれたんだ!?」
足牙 「あいつの母親らしいわ!あいつ確か気ィ失う前『私のぼうや』て
言われた言うとった!!」
葛 「『幻影』の術を破る方法は…自分自身で破る以外には一つ…現れ
た幻影と引き込まれた人物両方に深い関係を持つ者を媒介にする
事…。ただし…」
足牙 「ただし?媒介になるだけやったらあかんのかいな?」
葛 「―――ああ…。媒介になった者は何らかの呪いを受けるらしい。
確か…『死』の呪いだったか…」
苦楽夢 「じゃあ………朱呂は……」
死神 「何とも卑劣なことをするものよ。助けに行こうと行くまいと、ど
ちらか一人は必ず死ぬのか…」
葛 「どうする朱呂…この選択はお前の自由だ。行けば山吹丸は助かり、
お前は死ぬ。行かねば山吹丸は死に、お前は助かる。お前自身が
選べ。」
苦楽夢 「朱呂…」
朱呂 「………―――フッ 何を真剣に悩む必要がある。答えなど初めか
ら決まっている。要は死ななければいいのだろう?」
皇雀 「じゃあ…やっぱり…」
朱呂 「放っておく。」
全員 「なっ…!!!」
足牙 「ちょ―待て!!お前わかって言っとんのか!?行かんかったらア
イツは死ぬねんで!?」
朱呂 「構わん。第一、いつ俺がそこまで慈悲深いヤツになった?」
ヒュッ 言いながら朱呂、雲から飛び降りる。
苦楽夢 「朱呂…お前……」
苦楽夢、朱呂と同じ場所に行こうとする。
が。
朱呂 「それ以上俺に近づくな。近づけば―――(血の蔓を絡ませながら)
殺す……。」
紅い血の竜巻が、朱呂の姿を消した…
朱呂 「紅腕狼…朱呂…山吹丸……」
二章…偽りの子守唄に絆を見ること・中
ここは山吹丸の『幻影』の中…
永く甘い…霞のかかった夢の中…
巴(山吹丸達の母)「山吹丸…」
山吹丸 「あなたが……俺の…母上…?」
巴 「そうよ…。山吹丸…。ごめんね…。あなたが物心ついたとき、私
はあなたの側にいてあげることが出来なかった…。さぞや辛い思
いをさせたのでしょうに…。どうか母を許してくれますか?」
山吹丸 「母…上……山吹丸は……母上に会いたくて……」
山吹丸は気付かなかった…自分の精神がどんどん幼くなっている事に…!
巴 「山吹丸……久しぶりに遊びましょうか………。今から私は目をつ
ぶります。次に目を開ける時までに100数えてみましょう…」
山吹丸 「はい!ははうえ!―――ひとぉつ、ふたぁつ…みっつ…」
巴 「途中で眠くなったら、遠慮せずに寝てしまいなさい…母さんが子
守唄を歌ってあげるからね……」
山吹丸 「ここのつ……とお…じゅう…いち…じゅう…に…じゅう……さ…ん…じゅ
う…し…じゅう…ご……じゅう…」
あれ…?眠くなってきちゃったなぁ…
山吹丸 「は……は…うえ……眠い……よ…」
巴 「じゃあ、子守唄を歌ってあげるわね……坊や……」
彼方の声 「寝るな!!!」
え…?だれ?
山吹丸 「ははうえ…やまぶきまる…ね…まだ数えるよ……。16、17、
18、19……」
巴 「100まで数えたら、教えて頂戴ね。」
山吹丸 「はい!33、34………」
一方ここは現実の世界。
葛 「おそらく術を使っているのは楊月だな。術に引きこむ際、少々の
テンプテーションを使ったのだろう。」
苦楽夢 「ヤロウ…俺達から一体どれだけ仲間を奪えば気が済む!?」
蒼龍 「わかんねえな…奴らの最終目的がどこにあるのか…」
残輝、引き続きレーダーで紅腕狼を追っている。
葛、通信機で異動を報告。
苦楽夢 「朱呂だって何で山吹丸を放って行ったんだよぉ…」
葛 「俺が思うに…あいつは山吹丸のところへ行ったのだと思う。」
苦楽夢 「何でだよ。あいつは確かに『放っておく』って…」
葛 「精神的被害を出来る限り少なくしようと思ったんだ。今のままの
関係では自分が呪いで死んだ時、悲しむ者が多く出るだろう。だ
からあえてああやって皆との関係を絶とうとしたんだ。恐らく山
吹丸を救出した後、あいつは俺達から離反するだろう。」
苦楽夢 「そんな…!じゃあ紅腕狼は!?アイツを諌められるのはあいつし
か…!!」
葛 「アイツのコトだ。自分でやると決めたら退かないからな。」
苦楽夢、残輝の所へ駆け寄る。
苦楽夢 「残輝!朱呂の座標を特定できねぇか!?」
残輝 「……生憎ながら……只今朱呂様はレーダーで感知できない所に
おられます。ハイパワーで検索すれば見つかるかもしれませんが
それには並ならぬ力を消費するので…」
いきなりレーダーの天宮の三つの座標のうち一つが点滅する。
残輝 「おや!?この座標は……清準様!?(通信機を取って)メーデー
メーデー、もしもし!?清準様!?応答してください!!清準様!
清準様!!」
明染 「残輝!?残輝なの!?どうしよう…清準様がまた倒れてしまって
…今回はもう完全に意識もないの!!運ばれてきた時はまだ無天
八卦鏡は浮いてたのに、私が見つけた時にはそれすらも落ちてい
たの!!あの時大元老様に頼まれて情報収集をやっていて、途中
までしか出来なかったけど大元老様はいいって言ってくれて…で
もきっとそれじゃ悪いと思われて出ない力を振り絞って最後まで
終わらせたのよ!!だって情報は完璧に集まっていたもの!!」
蒼龍 「あいつ…!!」
残輝 「明染!それは命に関わる大問題だ!!今清準様はどうなっている
んだ!?」
明染 「今は大元老様がご自分の空間:天星空竜に清準様を閉じ込められ
たわ。『このまま放っておけば回復するだろう』って…」
残輝 「じゃあ今清準様は大丈夫なんだな!?」
明染 「ええ…」
残輝 「よかった……」
明染 「清準様が回復なさるまで情報収集は私が代行するわ。心配しない
で。報告とかは今まで通りやって大丈夫よ。」
残輝 「ありがとう。じゃあ、切るぞ。(ブツッ)」
蒼龍 「あいつ…『斎のためなら何だってする』…昔そんな事言っていた
な。自分だって結構大変なのによ。」
残輝 「(清準様は…ご自分の命が危なくなるかもしれないのに、大元老
様の為を思われて弱った体をおして情報収集をされたのだ…だが
俺はは何だ。まだまだ力に余裕はあるくせに、大きな力を使う事
を恐れている。………本当は後の戦いの為に力を温存しておきた
かったが…)苦楽夢様!」
苦楽夢 「何だ?残輝。」
残輝 「朱呂様と山吹丸様の座標……検索して差し上げます!」
苦楽夢 「えっ!?いいのかよ!だって並みならぬ力を消費するって…」
残輝 「清準様のことを聞いて喝を入れられました。今から調べますから、
なるべくお早く行ってあげてください。朱呂様の為にも、山吹丸
様の為にも!!」
苦楽夢 「残輝…。かたじけねぇな。頼むぜ!」
残輝 「ハイパーサーチ……アクセス先…スリーポイント……データロー
ド……開始……」
残輝、気を集中させながら手早くキーを打っていく。
残輝 「座標1:紅腕狼…ロード完了………くっ!」
苦楽夢 「大丈夫か!?」
残輝 「私のコトは気になさらずに!!……座標2……」
死神 「相当くるはずだ。ハイパーサーチは見つかる確率は通常のサーチ
より格段に高いが一人探し出すのに通常攻撃で使う気力の五倍は
軽く消費するからな。」
皇雀 「ごっ…5倍は軽くですって!?」
残輝 「座標…2…山吹…丸……ロード完……了………」
苦楽夢 「頼む!がんばってくれ!残輝!!」
残輝 「座標3!朱呂…………―――ロード、完了!!!!」
蒼龍 「残輝……よくやった。」
蒼龍、力を大量消費し倒れかかる残輝を支える。
残輝 「蒼龍様に……誉められるなん…て……私は幸せもの…です…」
苦楽夢 「ありがとう。残輝…」
残輝 「苦楽夢…様……(ゴソゴソ…何かを取り出して)こ…れ…今レー
ダーに……ロードした座標を…プラスして……このレーダーにあ
る座標を…全てダウンロードしておきました……。道に迷われた
ら……元も…子も…ありませんから…ね…」
苦楽夢 「ふ…どこぞのバカヤロウと似たような口吐いてくれるぜ!携帯レ
ーダー、確かに貰ったぜ!行くぜ!皇雀!兄貴!!」
蒼龍 「いや…待て苦楽夢。俺はここに残る。お前らだけで行け。」
苦楽夢 「何でだよ兄貴。」
蒼龍 「バーロー、この戦いの主役はお前らなんだぜ?最終決戦の時、主
役が出ると負けでいいのか?いいチャンスだ。せいぜい鍛えてき
な。」
苦楽夢 「おんどれ俺らはまるでザコ同然とでも言わんばかりに… けど…
兄貴の言い分も一理ある。わかった!だが帰ってきたら真っ先に
一発殴らせてもらうからな!」
蒼龍 「おうよ!たのしみに待ってるぜ!」
苦楽夢、皇雀、レーダーを手に遠くへ飛んで行く。
残輝 「蒼…龍…様……私は少しでも……お役に立てたでしょうか…?」
蒼龍 「ああ!充分役に立ったぜ!それに…あいつらは主役だからな…」
三章…偽りの子守唄に絆を見ること・下
再び山吹丸の幻影の中…
山吹丸 「69…なな……じゅう……ななじゅう……い…ち…」
彼方の声 「寝るな!山吹丸!!寝るんじゃない!!起きろ!目を覚ませ!」
山吹丸 「ははうえ…誰かがね…さっきからやまぶきまるに寝ちゃダメだよ
って言うの…。あれ、だれ?」
巴 「気にしないでいいのよ…。眠たいのなら気にせず寝ちゃっていい
のよ…。」
山吹丸 「う…ん…!?ははうえ!なぁにこれ!?辺りが血だらけだよ!」
巴 「この血は…」
彼方の声 「山吹丸!目を覚ませ!!思い出せ!!!」
山吹丸 「知らない!お兄ちゃん知らないよ!お兄ちゃん誰!?」
山吹丸、少しだけ精神が元に戻る。
彼方の声 「覚えてないのか?忘れてしまったのか?」
山吹丸 「お兄ちゃん……血だらけの…お兄ちゃん…血にまみれた…兄さん
…」
またひとつ、山吹丸の精神が元に戻った。後一息だ!!
彼方の声 「そうだ…俺だ…ここにいる、俺だ―――!」
山吹丸 「あ・・・に・・・き・・・?義兄貴?」
巴 「違うのよ!山吹丸。そっちを見ちゃダメ!!」
彼方の声 「山吹丸!!!」
山吹丸 「朱呂義兄貴!!!!」
パァン!… 巴と山吹丸の間で何かがはじけた。
山吹丸 「朱呂…あに…き!?どうしてここに…?」
朱呂 「話は後だ。とっととコイツを片付けるぞ。」
巴 「なぜだ…なぜこの術が破れた…!?」
朱呂 「フ…お前が母親の姿を知らなかったのが幸いだったな!山吹丸。」
巴 「!………しまった!!」
朱呂 「山吹丸の本当の母親はコイツを産んだ直後死んだのさ!知らない
母親にあそこまで吸い寄せられるお前もスゴイがそれを『成功し
た』と信じきっているお前も相当なもんだな。」
巴(楊月)「く……こうなったら何としてもお前だけは…!!」
朱呂 「(これが………『死』の呪いか…)フン……運命だろうと呪縛だ
ろうと……全てこの手で切り裂いてやる。」
朱呂、血の茨を這わせる。
楊月 「これは…?」
それは以前、破刃苦楽夢で楊月が自ら兄に頼んだこと。
楊月 「お兄様・・・お願いが・・・あるの・・・」
朱呂 「・・・・・」
楊月 「前までは、気にならなかった、この心の中の・・・
私が知らない、『黒いもの』が、
いつかは私を完全に飲み込んでしまうような・・・
そんな夢を、よく見るの。
きっとこの『黒いもの』は、お兄様にも、皆にも迷惑をかけるわ。
・・・・だから。 もし私が飲み込まれてしまったら。
そのときは。
ためらわず私ごと『黒いもの』を消し去って。
・・・・お願い・・・・・」
――それが、兄妹が交わした、最初で最後の約束――
朱呂 「血の茨よ、お前の糧はそこにある。骨も残さず食い尽くすがいい。
―――血茨嶽沈(けっしがくちん)!」
楊月 「いやあああああああ!!!」
楊月、血の茨に覆われ、跡形もなく食われる。
現実世界。
足牙 「何や何や何やぁ〜〜〜?」
見ると、山吹丸を朱の鮮血の塊が覆っているではないか!
苦楽夢 「どうしたんだ足牙!その血の塊…もしかして本当に朱呂が!?」
足牙 「みたいやな。見てみい。」
やがて、血の塊が破裂する。
そして中から出てきたのは――!
苦楽夢 「朱呂!!山吹丸!!」
それは明らかに朱呂の肩に腕をかけ、意識がもうろうとしている山吹丸とそれを連れた朱呂だった。
皇雀 「朱呂…やっぱり…」
朱呂 「………なぜお前達がここにいる。」
苦楽夢 「ヘッ あんな不自然な別れ方されて、納得いくヤツがどこにいる
んだってんだ!」
朱呂 「不自然………か……。」
苦楽夢 「でも朱呂……やっぱその首筋の刻印…」
苦楽夢、朱呂の首筋に意味ありげな刻印を見つける。
朱呂 「やはり無理だったか…。ヤツを完全消滅させれば大丈夫だと思っ
たが…。これはかなりきついタイムリミットだな。」
苦楽夢 「大丈夫だって!一人じゃねぇんだからよ!俺達がいるじゃねぇか
!!」
朱呂 「全くお前達というヤツは…」
苦楽夢 「人のコト言えるかよ!」
朱呂 「…聞け。俺がやつを倒したとき、あいつはこんな言葉を断末魔に
吐いた…。」
楊月 「フフ…フ…お兄様ん★…知ってた…?このダンジョンは…ね…時
間制限付き…なのよん……★時間内に…このダンジョンを…出ら
れなかったら………ダンジョンごと…っ…爆発する…わ…ふふふ
ふふ……いいわ…せいぜい苦しむがいいわん★…あーっはっはは
はははは!!!………」
皇雀 「そんな!タイムリミットまであとどれくらいなの!?」
朱呂 「わからん。それはまた誰かに調べてもらうしかない。」
苦楽夢 「とりあえず一旦戻ろうぜ。お前らも来るか?」
邪韓竜 「そうですね。人員整理も必要でしょう。戦闘不能人物が何人か出
てきたことですし。」
山吹丸 「俺…は………戦え………る……まだ……いける……」
朱呂 「死に損ないが、お前は黙っていろ。」
山吹丸 「……に…き……(ガクッ 山吹丸疲労の為寝る。)」
朱呂 「(自分の肩で寝ている山吹丸を見ながら笑って)フ……バカが。」
四章…同じ道は二つとない・信じる道もただ一つ
こちら双眼鏡で遠くを眺めてる葛。
朱呂の所へ行った苦楽夢と皇雀の帰りを今か今かと待っている。
死神 「何か見えますか?葛殿。」
葛 「―――――来る…」
残輝 「え…?」
死神 「帰ってこられたのか…――――ってぇ!」
ぎゃ―――――!!!!
死神の真上に何かが振ってきた。
朱呂 「……これだからお前達のヘボいワープは……」
苦楽夢 「何だよ?何か失敗したか?」
皇雀 「……!大変!苦楽夢、足の下…」
苦楽夢 「あ゛。」
死神、立ち上がる。そのついでに二人を殴る。
死神 「全く…何をなさるかと思ったら…。」
苦楽夢 「死神……お前……」
死神 「何か?………!!」
死神、今になってフードが外れている事に気付く。
苦楽夢 「いつか見てみたいとは思っていたがフードの下はそんな顔をして
いたのかぁ…。」
皇雀 「結構美人だったのね、死神さんって。」
今までは見えなかった金髪の長髪、誠実さを秘めた灰色の瞳、白い肌、その全てが日の目を見た。
死神 「別に隠していたわけではない!」
苦楽夢 「じゃあ何でフードなんか被ってたんだよ?」
死神 「う……ι」
にぎやかな笑い声が、その場に沸き起こった
ここは、天界の外れ。さびれた建造物が散乱している。
そこにたたずむ、一つの人影・・・
天沙である。
天沙 「・・・・間違ってる・・・・お前達が・・・死ぬなんて・・・」
それは以前天沙が偶然聞いてしまった事・・・
清準 「斎・・・この戦いはいつ終わるんだい?」
大元老 「・・・『全てが終わる』時、この戦いは幕を降ろす・・・」
清準 「・・・なるほど。月戒妃を倒しただけじゃ、この戦いは終わらないんだね。」
大元老 「・・・清準よ、「四神」の存在意義を知っているか?」
清準 「?天帝や、僕らを守る事じゃないの?」
大元老 「そんな単純なものではない。・・・彼らは戦う為に生き、そして死ぬ。
戦いが終わる時は、彼らが死ぬときだ。」
・・・・・・・・
天沙 「そんな事は、間違っている!!戦いを望みもしないお前が・・・
戦いの終わりと共に死ぬなど・・・」
・・・そんなこと、この俺が許さない。
戦いが終わって、お前を失うぐらいなら
平和の名の下に、お前が殺されるぐらいなら
俺はこの戦いを終わらせない。おまえが死ぬぐらいなら。
この戦いを永久に続けてやる。
例え世界を敵に回そうとも。